介護と医療サービス提供のあり方を左右する「介護報酬」と「診療報酬」の4月からの改定内容が出そろった。

 大きな特徴は、入院・入所から在宅への誘導だ。

 介護は、事業所が医師らと連携し身体機能の回復に取り組んだり、通所介護(デイサービス)を利用して高齢者の症状を改善させたりした場合に、報酬を上乗せした。

 診療は、紹介なく受診する際の大病院の初診料負担を増やす一方、かかりつけ医の訪問診療や夜間・休日対応への報酬を加算し、退院支援を担う回復期向け病床の報酬を手厚くした。

 背景には、6年に1度の同時改定となる今回の機会をとらえ、要介護状態になっても地域で暮らすための「地域包括ケアシステム」に関わる報酬を手厚くすることで、在宅医療・介護を後押ししたいという政府の狙いがある。

 そのため介護報酬ではほかに、介護施設で外部の医師がみとりをした場合の報酬を新設した。

 だが今改定も、これ以外の目新しさはなかった。それは各改定を反映した改定率に表れている。

 介護は今回、6年ぶりに増加に転じたものの0・54%の微増にとどまった。診療も診療本体で0・55%の微増の一方、薬価(1・65%)と材料価格(0・09%)で減少と、全体としての減少傾向は変わらなかった。

 政府は2013年、社会保障抑制策の方向性として「能力に応じた負担」の理念を打ち出した。そのため、それ以降の報酬改定は「自立支援」偏重となり、今回の改定でも利用者の自立を促す側面が強調された。

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 結果として、介護・医療サービスの議論は置き去りとなっている。

 例えば、介護職の人手不足問題を巡っては15年改定で、月1万2千円相当の給料アップにつながるよう加算金を増やしたこともあった。しかし大本となる改定率の低迷に、介護関係者からは「この程度の上乗せでは離職を食い止められない」との指摘があがる。

 介護保険制度が始まった2000年度に約54万9千人だった介護職員(非常勤含む)は、15年度約183万人になった。厚生労働省は「団塊の世代」全てが75歳以上となる25年度の必要数を約253万人と推計、介護職員が37万7千人不足する恐れがあるとしている。介護職が不足したまま在宅移行すれば、今以上の家族介護の負担増となるのは目に見えている。

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 在宅医療を担う訪問診療も増えない。過去の改定で手厚くしたにもかかわらず、現在、みとりまでする診療所は全体の5%にすぎない。それなのに今改定も、報酬を上乗せするという相変わらずの手法にとどまった。

 安倍晋三首相は昨年、今改定について「(25年まで)残された期間を考えると重要な分水嶺(れい)」と語った。だが在宅医療・介護は本来、小手先の報酬改定だけで達成されるものではない。財源面もサービス面も、持続可能な社会保障のあり方の議論こそ必要だ。