政府のなりふり構わぬ姿勢が鮮明になった。

 防衛省は名護市辺野古で建設作業が進む新基地に近接する「久辺3区」(辺野古、豊原、久志)に対し、直接補助金を交付する新たな制度を創設した。1区最大1300万円、計3900万円を各区からの事業申請に基づき、年内にも交付する。来年度以降も継続する方針だ。

 交付要綱に久辺3区の文字はないが、事実上久辺3区に特化した補助率100%の補助金である。新基地に反対している名護市の頭越しに末端の区に支出する。しかも補助率100%というのはもはや補助とはいえず、「バラマキ」である。法律に基づく支出でもない。区の要望に応えるのは「記憶する限りはない」(井上一徳沖縄防衛局長)という前代未聞の予算措置だ。

 沖縄で「区」というのは地域住民からなる地縁団体のことである。町内会や自治会のようなものだ。交付要綱では補助対象は「航空機が40機、部隊が千人を超えて増加する施設が所在する地域の地縁団体(自治会)」と規定する。新基地ができてもいないのにそれを前提とするのはおかしい。

 区長は公職選挙法に基づいて選ばれるわけでもなく、公金の使途や管理をチェックする議会に相当する機関もない。予算の執行が適正に行われたかどうか、あいまいのままで税金を使うことが許されるのか。そもそも地縁団体が補助金を支給する対象になるのかどうか。

 政府自ら地方自治や財政支出のルールをないがしろにしているとしか考えられない。

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 菅義偉官房長官は新基地に反対する市民らの抗議活動に伴う「騒音」も交付理由に挙げる。市民による反対の意思表示は「表現の自由」であり、抗議活動に対する補助金というのも聞いたことがない。

 政府の狙いはどこにあるのだろうか。菅氏は久辺3区が新基地建設に「同意」しているとの印象を与えようとしているように見える。

 菅氏は今月17日の記者会見で「地元の人たちも条件付きで辺野古移設に『賛同』している」と発言している。

 これに対し、辺野古区の嘉陽宗克区長と久志区の宮里武継区長は「賛同していない」ときっぱり否定している。

 久志区では1997年の区民総会で決議した「移設反対」が生きており、補助金を受け取るかどうか、区民総会でも結論を持ち越している。

 嘉陽区長も「移設の見返りではなく、迷惑しているから補償を求める立場」と、賛同ではないことを強調する。

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 名護市には米軍再編交付金を使った「久辺3区地域コミュニティー事業」がある。前市長時代の再編交付金を活用した基金は数億円規模で残っており、ハード・ソフト事業ができる仕組みだ。

 本年度も防犯灯設置などの事業が進められている。内容は政府が創設した対象事業とほとんど変わらない。

 政府が新基地建設で「アメとムチ」を露骨に使い分けていることを示している。久辺3区への直接補助金は、地方自治に介入し、地域を分断する姑息(こそく)な手段である。