発行部数はついに200万部を突破した。児童文学者で雑誌「世界」初代編集長の吉野源三郎原作「君たちはどう生きるか」の漫画版と新装版が一大ブームを起こしている。県内の大手書店でも売り上げ1位。コンビニにまで平積みされている

▼主人公の中学生「コペル君」が学友との交流や叔父さんとの対話・手記を通して人としての生き方を学び、考える内容だ

▼原作が出版された1937年は日中戦争の発端となる盧溝橋事件が起きた年。吉野は台頭する軍国主義に危機感を覚え「偏狭な国粋主義ではなく、自分の頭で考えられる子どもたちに育てたい」と筆を執った

▼コペルの愛称は天動説が常識だった時代に地動説を唱えたコペルニクスにちなみ叔父さんが付けた。メンター(助言者)として登場する叔父さんは、世間に流されず、自分自身が感じたことを大切にするよう説く

▼企画に携わったマガジンハウスの鉄尾周一さんはヒットの理由を「将来に漠然とした不安がある今、『どう生きるべきか』と考えている人に響いたのではないか」と話す

▼政治情勢が混沌(こんとん)とし、価値観が多様化する中、生きる指針を探している人が多いのかもしれない。コペル君は日々の経験や叔父さんとの交流で考える力を培っていく。「私はどう生きるか」。答えを見つけるプロセスこそ大切なのだろう。(高崎園子)