国の機密情報を漏らした公務員や民間人に厳罰を科す特定秘密保護法が施行されてから、10日で1年を迎える。

 対象となる機密情報は「防衛」「外交」「スパイ防止」「テロ防止」の4分野。機密の指定件数は6月末現在、防衛省など10機関の417件。文書では23万件余りに上る。

 行政機関による指定が着々と進む一方、国民の「知る権利」や関係職員らの人権を脅かす同法の問題点は、依然として残されたままだ。

 機密を扱う公務員らの身辺を調べる「適性評価」には、プライバシー侵害の懸念が消えない。

 調査内容はテロリズムとの関係のほか犯罪歴、経済状況など多岐にわたり、精神疾患の有無や飲酒の程度、家族の生年月日や国籍まで含まれる。本人が申告した内容を裏付けるため、医療機関や信用情報機関などへの照会も可能としている。

 政府が公表した適性評価の対象者は9万7560人。共同通信の取材では、防衛、外務両省の職員ら計25人が適性評価を拒否していたことが分かった。うち8人は民間の防衛産業従業員だった。拒否の理由は不明だが、公務員らの一部も抵抗感を抱いているようだ。評価で不適格とされた人も1人いた。

 施行から1年たっても、特定秘密の要件など国民にとって不明確な点があまりにも多い。秘密が際限なく広がっていく懸念が拭えない。政府の恣意(しい)的な秘密指定を防ぐ監視機関の実効性にも疑問符が付く。

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 運用状況を指揮・監督する事務次官級の「内閣保全監視委員会」にしても、不適正な指定や管理がないかを監視する審議官級の「独立公文書管理監」も、身内の組織だ。

 衆参両院には「情報監視審査会」が設けられ、秘密指定の妥当性をチェックすることになっているものの、こちらも心もとない。秘密指定の解除を含めて政府に改善を勧告する権限を持つが、強制力はないからだ。

 参院の審査会は、政府の説明が不十分だとして提示を要求し、政府は3日の会合で、外務省や防衛省などの特定秘密3件を提示した。だが、会合は非公開で質疑の内容も非公表。記者団に示されたのは件名だけで、これでは何を監視しているか分からない。

 安全保障関連法では、集団的自衛権の行使について国会の承認を得ることになっている。だが、その際に特定秘密は開示されない可能性がある。つまり、国会承認は歯止めにはならない、ということだ。

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 特定秘密保護法に対しては、国連で表現の自由を担当する特別報告者が2013年、「秘密を特定する根拠が極めて広範囲であいまいなようだ」と懸念を表明した。

 後任の特別報告者も今月、日本での現地調査を予定していたが、日本政府の突然の要請で延期を余儀なくされた経緯がある。

 同法の問題点には世界が注目している。安全保障関連法と連動すれば、さらに危険性が高まる。ただちに廃止すべきだ。