名護市辺野古の新基地建設をめぐる県と国の対立は、「世論への働きかけ」と「訴訟の応酬」という二つの面で、激しさを増してきた。

 日米両政府は進行中の裁判を意識し、県内外の世論を意識し、来年1月の宜野湾市長選を意識して、負担軽減に取り組んでいることをアピールするのに必死だ。

 4日には、菅義偉官房長官とケネディ駐日米大使が官邸で会見し、普天間飛行場の一部約4ヘクタールと牧港補給地区の国道隣接地約3ヘクタールを2017年度中に返還することを明らかにした。

 嘉手納基地より南の「基地統合計画」で示された返還時期よりも早い前倒し返還が実現することになる。

 会見にはドーラン在日米軍司令官も同席した。何とも仰々しいお膳立てだ。成果をアピールしたい気持ちがありあり、である。

 ただし、返還される普天間飛行場の約4ヘクタールは、1996年の普天間全面返還合意に先立って、90年に一部返還に合意していた場所である。返還予定面積は、飛行場(約481ヘクタール)全体の1%にも満たない。

 返還合意の揚げ足取りをするつもりはないが、小規模返還になぜ、これほど時間がかかるのか。なぜ、この時期の大々的発表なのか。

 問題なのは、訴訟が進行中であるにもかかわらず、日米共同文書の中で「名護市辺野古への移設が唯一の解決策」だと再確認していることだ。

 具体的な説明はせずに「唯一の選択肢」という言葉を乱発するのは誠実さを欠いた世論操作というしかない。

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 翁長雄志知事は、辺野古移設を再確認したことについて「20年前に合意した返還の推進をもって、辺野古の建設を押しつけようとする政府の姿勢は、基地負担軽減を願う県民の気持ちに向き合うものではなく、誠に残念」だと不信感をあらわにした。

 翁長知事が代執行訴訟の第1回口頭弁論で意見陳述した翌々日に先行返還を発表するのも政治的な作為を感じる。

 翁長知事は昨年の知事選で、埋め立てを承認した現職の仲井真弘多氏を約10万票の大差で破り、当選した。昨年実施された名護市の市長選や市議選、衆院選でも「辺野古反対」を主張する候補が完全勝利した。政府は、何よりもまずその結果に謙虚に向き合うべきである。

 沖縄は明治以来、日本外交の道具として使われ、政府の都合で包摂されたり排除されたりしてきた。沖縄から見れば国家エゴにほかならない。

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 国が公権力を行使して基地建設を強行すれば、日米政府は、大きな政治的代償を支払うことになるだろう。

 県は4日の庁議で、翁長知事の埋め立て承認取り消しの効力を停止した石井啓一国土交通相の決定を不服として、取り消しを求める抗告訴訟を起こすことを正式に決めた。 来週8日、県議会に提案する。今後、代執行訴訟、抗告訴訟、国地方係争処理委員会の三つの舞台で政府の基地政策が問われることになる。日本のどの自治体も経験したことのない異常な事態だ。