パリ同時多発テロ後、米国が主導する有志連合のシリア空爆が激しさを増している。テロは「飛び火」し、報復の連鎖が繰り返されている。

 英国が、イラクからシリアに空爆を拡大した。ブッシュ米政権時のイラク戦争に加担し、大量破壊兵器が見つからなかった苦い経験を持つが、フランスの要請に応えた。同じく慎重だったドイツも政策を転換、フランス軍などを後方支援する偵察機や艦船、兵士らを派遣する。第2次世界大戦後で最大規模の国外派兵である。独自に空爆するロシアを含め主要国が軍事介入する事態となっている。

 有志連合が軍事力を前面に押し出す一方で、テロの脅威は拡散している。ロンドンの地下鉄駅内で5日、男がナイフで3人を刺して負傷させた。男は「シリアのためだ」と叫んだといい、警察当局はテロ事件として捜査を始めた。英空軍がシリア空爆に踏み切ったタイミングである。

 米カリフォルニア州の福祉施設では2日、銃乱射事件が起き、14人が死亡、容疑者夫婦が射殺された。容疑者の妻がフェイスブックで「イスラム国(IS)」に忠誠を誓っていたことなどから連邦捜査局(FBI)はテロと断定して調べている。

 米同時多発テロ後に行われた米英などによるアフガニスタン、イラクの対テロ戦争で、軍事力だけではテロをなくすることができないことは証明済みである。

 「フランスは戦争状態にある」と叫ぶオランド大統領をはじめ、有志連合の指導者には報復の連鎖を断ち切るために冷静さこそを求めたい。

    ■    ■

 空爆には、何の罪のない人たちが誤爆を受けたり、巻き添えになったりする危険性が常に伴う。空爆が新たなテロの芽を育て、憎悪の連鎖を引き起こす要因になることを強く懸念する。

 シリア人権監視団(英国)が先月30日に明らかにしたところによると、ロシア軍がシリアでの空爆を始めた9月30日以降、民間人485人を含む計1502人が死亡している。民間人には女性74人と18歳未満の子ども117人が含まれている。人道上、許されることではない。

 有志連合の空爆後の戦略が見えない中で、国際社会はIS出現の原因である内戦状態のシリアの停戦を急がなくてはならない。同時に、それぞれの国内では移民に対する差別や貧困、社会的疎外などテロにつながる社会的土壌を変え、文化の多様性を認める息の長い取り組みが必要だ。

    ■    ■

 パリ同時多発テロは難民受け入れにも影を落としている。主犯格の容疑者がシリア難民に紛れてフランスに入ったと報じられたからだ。

 欧州では難民排斥の世論が高まっている。テロ後、初めて行われるフランスの全国選挙で難民排斥や反イスラムを掲げる極右政党の全国支持率が30%となり、躍進する勢いをみせている。

 イスラム過激主義者とイスラム教徒は違う。難民排斥のムードが社会を覆うと、「ホームグロウン(自国育ち)」による新たなテロを呼び起こすことになりかねない。