「あなたは適性評価の対象者となりました」。告知書が国の職員などに届く。同意すると、秘密を漏らす恐れがないか、身辺の徹底調査が始まる

 ▼収集するのは繊細な個人情報ばかりだ。過去に外国籍ではなかったか、家族に外国人はいないか、職を転々としていないか、酒を飲み過ぎないか-。27ページに及ぶ質問票は、精神疾患の治療やカウンセリング歴、医師名まで記入を求める。国が「こういう人は怪しい」「差別的に扱ってもいい」と発表したも同じだ

 ▼適性評価の根拠となる特定秘密保護法は10日で施行1年。これまでに9万7560人が対象になり、国の職員17人と、防衛産業の従業員8人が調査を拒否したことが共同通信の取材で分かった

 ▼調査の大規模さに慄然(りつぜん)とする。同時に、ごく一部とはいえ調査を拒否する人権感覚が国の中枢にあることにほっとした。秘密を扱う仕事はできず、配置転換もあり得る。相当な覚悟が必要だっただろう

 ▼この夏、米国家安全保障局(NSA)が日本の経済産業相や財務相、日銀総裁の電話を盗聴していた疑惑が浮上した。日本は調査と説明を求めたが、その後はうやむやだ

 ▼盗聴はまさに保護法が定める不法行為。国内で人権侵害という大きな犠牲を払いながら運用を続け、米国には腰の引けた対応。一体、この落差はどうしたことか。(阿部岳)