「考えるな感じろ」。愚か者がうのみにすると痛い目に遭いそうな危険な名言。しかし、人は忘れながら暮らす生き物。だからこそ「感じる」ことは重要だと思える1本。

「殺人者の記憶法」の一場面

 主人公は、アルツハイマーの元殺人鬼・ビョンス。本人の記憶では17年前の最後の殺人以来1人も殺していない。しかし、街では若い娘を狙った殺人事件が連続していた。

 まな娘の身を案じつつ、記憶のない自分を疑っていたある日、ビョンスの前に殺人鬼が現れた。感覚でわかるのだ。同じ殺人鬼の匂いをまとったその男は娘の恋人を名乗った。娘が危ない。激しくそう感じるのに考えを巡らせても全て忘れてしまう…。

 人体の神秘。萎縮する脳内で、海馬が記憶を消しても、経験をすり込ませた肉体が全て覚えている。感動と同時に深い悲しみが胸にしみる。(桜坂劇場・下地久美子)

 ◇桜坂劇場で3日から上映予定。