沖縄県八重瀬町で唯一の漁師町・港川の港川漁協近くに、年季の入ったコンクリート平屋建ての料理店がある。道沿いの壁に「南国食堂」と書いてある下の扉をくぐると、どこかノスタルジックな食堂らしい風景が広がる。

イカちゃんぷるー(700円)。ご飯とそば、漬物が付く

どこか懐かしい風情の「南国食堂」と、台所を切り盛りする上原敦子さん=八重瀬町港川

南国食堂の場所

イカちゃんぷるー(700円)。ご飯とそば、漬物が付く どこか懐かしい風情の「南国食堂」と、台所を切り盛りする上原敦子さん=八重瀬町港川 南国食堂の場所

 「セルフサービスとなります」の張り紙そばの配膳口から、台所を切り盛りする上原敦子さん(60)=糸満市糸満=の料理が出れば、なじみ客がお年寄りに運んだり、食器を片付けたり。あうんの呼吸で店が回る。ご近所同士で「けさ、アーサ取ってきたけど姉さん食べるね?」と、おすそ分けの預け先にも。地元に根差した憩いの場だ。

 上原さんの母で店の近所に住む店主・大城トヨさん(87)が1973年に開店し、ことしで45周年。みそ汁(税込み500円)、肉野菜そば(600円)、やきめし(500円)など庶民的なメニューで親しまれる。中でも一番人気はイカちゃんぷるー(700円)だ。

 地元で水揚げされたミズイカをキャベツや玉ねぎ、もやし、ニラ、昆布と炒める。一緒に食べるとイカならではのうま味が、じゅわっと口いっぱいに広がる。丁寧な下ゆでのおかげで、やわらかいながらも独特の歯応えも楽しめる。野菜の甘みとしゃっきり感、薄めのしょうゆ味と相まって、全体で調和の取れたコクと味わい深さ。ご飯が進む。

 地元のベテラン漁師たちを引き付け、ネットで評判を知った東京や台湾などからの観光客も多く訪れる。もともとトヨさんが県職員で船乗りだった夫・武吉さん(1928~2009年)の留守中、働く先として建てた食堂。自己流で母が調えた味を、子ども6人のうち5人目で唯一の娘・上原敦子さんが守る。

 上原さんは「守るも何も、客の好みを聞きながら母が工夫を重ねた味。変えようなんて考えたこともない」と笑った。(南部報道部・堀川幸太郎)

 【お店データ】八重瀬町港川315。営業時間は午前11時~午後3時。ラストオーダーは午後2時半。日曜定休のほか不定休。客席は20席ほどで駐車場なし。電話098(998)6136。