戦争やテロに絡む事件が世界各地で相次いでいる。歴史がじりじりと後ずさりしているような感覚に襲われる。

 州議会選挙に当たるフランス地域圏議会選(2回投票制)の第1回投票では、極右の国民戦線(FN)が移民排斥を唱えて大躍進した。

 欧州各地で、「テロ」や「移民」に対する国民の不安が高まり、排外的な空気が広がっている。

 オバマ米大統領は、カリフォルニア州で起きた銃乱射事件を「テロ行為」と断定し、過激派組織「イスラム国」(IS)壊滅への決意を明らかにした。

 米国が掃討作戦を強化すれば、日本に対しても支援を求めてくる可能性が高い。支援要請がなくても安倍政権は「積極的平和主義」の名の下に、自主的な判断で関与を強めるかもしれない。

 共同通信社が11月28、29両日に実施した全国電話世論調査によると、国内でのテロ発生の可能性について、「ある」「どちらかといえばある」と答えた人は合わせて79・7%に達した。

 もはや日本だけが安全地帯だとはいえなくなった。

 日中・日韓関係がいずれも戦後最悪といわれ、「嫌中・嫌韓」感情が広がる中で、別途、ISによるテロの脅威が浮上したことで、「戦争が露出してきた」との実感が身に迫るようになった。

 不安な時代には「友と敵」を区分けし対立をあおる政治がはびこる。「平和」よりも「安全保障感」が、「対話」より「軍事力」が、「個人」より「国家」が重視される。

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 「ようござんすね? このまま戦争で」。漫画家の小林よしのりさんは、今年刊行した『新戦争論1』の帯に、そんな刺激的な文句を掲げた。

 「サヨク」の戦争観などを批判してきた小林さんは、右傾化しすぎた現状に警鐘を鳴らす。

 別の著書では「今ではもう歴史観とかは全然関係なく『とにかく中国・韓国は嫌いだ』という感情的反発になっていて」「単なる排外主義としてのナショナリズムがかなり一般的になってしまった」(朝日新書『ナショナリズムの現在』)と指摘する。

 中国や韓国に向けられてきた拝外的なナショナリズムが、「イスラム国」に対してどのように反応するかはまだはっきりしない。

 懸念されるのは、「新たな戦前」の到来を思わせる社会的空気の中で、言論・表現・報道に対する統制や締め付けがいっそう強まることだ。

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 カリフォルニア州での銃乱射事件を受けて、米紙ニューヨーク・タイムズは、95年ぶりに社説を1面に掲載。銃の蔓延(まんえん)を「国家の恥」だと述べ、規制の必要性を強く訴えたという(7日付朝日新聞)。

 フランスの地域圏議会選で国民戦線が躍進するとの予想を受け、地方紙のボワ・デュ・ノール紙は社説で、具体的な政党名を挙げて不支持を表明した、と7日付毎日新聞が報じている。

 危険な兆候をいち早く察知し、警鐘を鳴らす。メディアには、以前にも増して、その役割が強く求められている。