たくましくて優しくて、背負った苦労はみじんも見せず心に染み入る黄金(くがに)言葉を折々で放つ「沖縄のおばぁ」。そんなおばぁそのものの女優、平良とみさんが亡くなった。享年87

 ▼何しろおばぁ役は20代から。身長140センチほどの体で、およそ60年にわたって演じてきた。晩年「私は美人じゃないでしょ。老け役なら、長く現役でいけると思ってね」と語るほどの筋金入り

 ▼その女優魂に実年齢が追いつき、名わき役から一気に全国区となった。映画「ナビィの恋」(1999年)に続く、NHK連続テレビ小説「ちゅらさん」(2001年)。「笑ったときのくしゃっとした顔がいとおしく、すぐに場が和んだ」(共演したゴリさん)のはお茶の間も一緒だった

 ▼あまりのはまり役に、沖縄へ来た観光客が高齢女性に「おばぁ」と呼び掛け「私にこんな孫はいない。あなたのおばぁ(祖母)じゃない」と言って怒った話を何度か聞いた。誰もが古波蔵家のおばぁ、ハナに会いたがった

 ▼芝居を始めたのは13歳、学費を稼ぐためだった。後輩の指導も熱心で、しまくとぅば継承にもこだわった。「ウチナーグチがなくなったら、ウチナー文化がなくなる。そうなったら寂しいさー」

 ▼くしくも戦後70年の師走に逝った「沖縄のおばぁ」。また大切な宝物を失ったような寂しさばかりが募る。(与那嶺一枝)