沖縄の歌三線には、人をもてなしながら、自分も同時に楽しむという要素がある。県立博物館・美術館収蔵の「進貢船の図」には、三線音楽のその特質が描き出されている

▼琉球王国の交易を担った進貢船のそばに浮かぶ小舟の中、扇を持って踊っている人を三線に見える楽器を持った人影が囲む。海上で歌や踊りを披露する様子は何やら楽しげ。絵の中の人たちは、芸能を見てもらうことを楽しんでいる印象を受ける

▼人を接待する「うとぅいむち」で奏でられる曲の代表といえば、何といっても「かぎやで風節」。沖縄本島などで、結婚式や各種祝賀会といった宴席で、余興の幕開けを飾る定番の旋律だ

▼もし「琉球古典音楽年間演奏回数ランキング」を集計することができれば、圧倒的にトップの栄冠に輝くに違いない。そして「演奏日」の順位を出せば1位となるのは、当然3月4日の「さんしんの日」だろう

▼年齢も性別も、そして国籍も超えてその音色に酔いしれる特別な日。国内は言うに及ばず、沖縄からの移民が多いブラジルやハワイをはじめ、イギリスやアフリカのナミビア共和国でも演奏されるようになった

▼小さな島で産声を上げ、琉球処分や沖縄戦など、歴史の荒波にさらされながら海を超えて広がった歌三線の文化。弾く人も聴く人も、今日はその魅力あふれる響きに包まれる。(玉城淳)