核兵器を巡って米ロの相互不信が高まっている。核軍拡競争を招きかねない事態だ。

 ロシアのプーチン大統領は1日の年次報告演説で、米国のミサイル防衛(MD)網をかいくぐることのできる最新の戦略核兵器開発に成功した、と述べた。

 「強いロシア」をめざす軍事偏重の演説でプーチン氏は、米国への対抗姿勢をあらわにした。

 背景にあるのは、韓国への高高度防衛ミサイル(THAAD)配備や、日本が導入を決めた地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」など、米国主導によるミサイル防衛網の形成である。

 米国のミサイル防衛網に対抗しなければロシアの核戦力が無力化されるとの危機感が、新たな核開発を招いているのである。

 米国のトランプ大統領は2月初め、核戦略の指針となる「核体制の見直し」(NPR)を発表し、「世界は大国間の競争に回帰した」と、ロシアや中国への対抗姿勢を鮮明にした。

 爆発力が低く「使える核兵器」と称される小型核の開発を盛り込み、核兵器の役割拡大や使用条件の緩和に踏み込んだ。

 核拡散防止条約(NPT)は、核保有国に対し、核軍縮を「誠実に交渉」する義務を課している。両政権に共通するのは、核兵器の役割を減らし核軍縮の道筋を示すのではなく、核の近代化や新型核兵器の開発を推し進めている点だ。

 核を巡る世界の風景は大きく変わりつつある。

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 小型核の開発について米国内には、実際に使われるかもしれないと敵に信じ込ませることが抑止力を高める、との考え方がある。核は使えないものと米国が自己規制すれば、抑止力は効かなくなるというのである。

 だが、爆発力を抑えた小型核兵器の開発は、核使用のハードルを下げるというリスクを抱えている。それだけではない。

 米国に対抗してロシアも小型核の使用を進めるだろう。米ロが先陣を切れば他の核保有国も「右へならえ」する可能性がある。

 トランプ政権の「核体制の見直し」について政府は、河野太郎外相談話で「高く評価する」と歓迎した。

 同盟国が攻撃を受けた場合でも自国への攻撃と見なして報復することを核の「拡大抑止」と呼ぶが、その姿勢が明確に示された、という理由からだ。驚きの談話、というほかない。

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 北朝鮮の核・ミサイル開発は日本にとって大きな脅威である。だが、圧力をかけ続けたあとに訪れるのは「軍事衝突」か「対話による解決」のどちらかだ。

 「対話のための対話」がいやなら、「解決のための対話」を模索すればいい。

 米ロの核軍拡競争は、北朝鮮問題にも影響を与えずにはおかないだろう。

 憲法9条を持つ「唯一の戦争被爆国」が、核軍拡競争や核拡散防止条約の弱体化に加担するようなことがあってはならない。