沖縄現代史の分水嶺(れい)に立っていると、強く感じた1年だった。

 昨年の知事選で現職候補に10万票近い大差をつけて当選した翁長雄志知事は、きょう就任から1年を迎えた。

 沖縄への基地集中を「差別」と感じる住民意識の変化を背景に、党派を超えた幅広い支持を得て誕生した知事である。県民の中に当選時の高揚感が残るのは、歴史的地殻変動の余韻と、知事に寄せる期待や信頼からだ。

 新基地に反対する翁長氏は選挙期間中、繰り返し「誇りある豊かさ」を主張した。

 県内政治は長く「基地」か「経済」かで色分けされ、ウチナーンチュとしての「誇り」を革新が、現実的な「豊かさ」を保守が担うという構図にあった。

 「基地」か「経済」か、という二者択一的な議論に終止符を打つためのキャッチフレーズが「誇りある豊かさ」だった。

 スイスで開かれた国連人権理事会でのスピーチ、米ワシントンでの要請行動、東京の日本外国特派員協会や日本記者クラブでの記者会見…。知事は就任後わずか1年の間に、できる限りの機会をとらえ、理不尽な基地政治の現実を訴えた。

 人権や自己決定権がないがしろにされてきた歴史的事実や、沖縄だけに過重な負担を強いる日本の安全保障政策の問題を浮き彫りにしていったのである。

 戦後史を分かりやすくひもとき、問題のありかを国内外に発信した意義は大きい。

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 一歩も引き下がることなく政府に対峙(たいじ)する翁長知事。何が何でも新基地を造ろうとする安倍政権。県と国の対立で浮かび上がったのは、沖縄の選挙で示された民意にそっぽを向き、米国に顔を向ける日本政府のゆがんだ姿である。

 安倍晋三首相は11月、フィリピンでオバマ米大統領と会談し、普天間飛行場の辺野古移設について「唯一の解決策だ。確固たる決意で進める」と述べた。

 新基地建設に反対する民意を顧みない安倍政権に対し、知事は「ウチナーンチュ ウシェーティ ナイビランドー」(県民をばかにしてはいけません)とウチナーグチで怒りをあらわにしたことがある。「なぜ沖縄だけが」という基地をめぐる県民の不信感や、自分のことを自分で決めることのできない不全感を「魂の飢餓感」と呼んだ。

 まともな政府であれば、この表現の深刻さをきちんと受け止め政策を変更するはずだが、その動きがない。それこそが政治の真の危機である。

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 年明け早々に控える宜野湾市長選と、続く県議選、参院選は、新基地建設の是非を争点にした選挙になるだろう。その結果は辺野古問題の行方を大きく左右する。

 基地が県政の最重要課題とはいえ、解決すべき課題は山積している。子どもの貧困対策や経済振興、雇用問題、離島振興など他の政策でも着実に結果を出していく必要がある。

 重大局面が続く中、知事就任2年目は、成果が問われる年になる。