伊江島土地闘争のリーダー、故阿波根昌鴻さん(1901~2002年)が「反戦平和資料館ヌチドゥタカラの家」の展示を自ら解説する30年以上前の音声テープが見つかった。43分あり、展示全体を網羅する唯一の記録。「平和の力を強くするためにこの資料館を造りました」。よみがえった語りは、資料館が今後、展示に生かす。(北部報道部・阿部岳)

阿波根昌鴻さんの解説音声を聞きながら展示を見る関係者=4日、伊江村・ヌチドゥタカラの家

故阿波根昌鴻さん

阿波根昌鴻さんの解説音声を聞きながら展示を見る関係者=4日、伊江村・ヌチドゥタカラの家 故阿波根昌鴻さん

 阿波根さんが残した資料は文書だけでも1万点を超える。15年にわたって調査を続ける阿波根昌鴻資料調査会が2月、カセットテープを発見した。

 録音したのは内容から1984年末の開館後間もない頃とみられ、阿波根さんは80代。張りのある声、独特の間で「ここにありますのは…」と解説していく。

 1966年7月、米軍のミサイル一時持ち込みに島ぐるみで反対する写真の前では、こう説明した。

 「私たちは叫んだのであります。帰りなさい。国ではパパーもママーも待っている。ベビーも大きくなっている。帰ればあなた方は幸せになる。あなた方が帰れば私たちも幸せになる。お互い幸せになる」

 「相手を不利、不幸にして自分たちだけが幸せに生きようとは考えない。それが私たち農民の考え方であります」

 資料館を運営する「わびあいの里」の役員らが4日、音声を流し、姿の見えない阿波根さんに導かれるように展示を見て回った。終わると拍手が起きた。

 30年余前の当時、このテープの録音を手配したという謝花悦子理事長(79)は「説明に悔しい思いが充満している。それでもこうして人々の理解が続き、声が残り、阿波根に死ということはない」とうなずいた。

 開館前から準備を手伝った川野純治理事(63)は「長いさおで展示品を指しながら解説する姿がよみがえった。戦争屋を喜ばせるな、もっと勉強しろ、とあの世から叱咤(しった)激励を受けたような気がする」と話した。

 高垣喜三常務理事(69)は音声をネット公開し、入館者が館内を回りながらスマートフォンで聞く方式を提案。資料調査会代表の鳥山淳沖縄国際大教授は「資料館は阿波根さん自身が説明する前提で造られている。肉声で館の個性が生きる」と語った。