自民・公明両党による2016年度税制改正大綱が、大筋まとまった。柱の一つである軽減税率は対象を広げ財源を1兆円規模とする見通し。与党の選挙対策を印象付けた一方、膨らむ国の借金や国民負担の軽減といった課題の解決策は示されなかった。

 軽減税率は、ことし10月に予定されていた消費税10%への増税延期と同時に議論が始まった。生鮮食品のほか加工食品への対象拡大を主張する公明に対し、課税手続きの複雑化などから拒否してきた自民が折れる形で決着する見込みだ。

 しかし、二者択一の議論に「国民の痛み」に向き合う姿は無かった。そもそも両党による軽減税率は、それまで5%だった消費税を8%へ引き上げた時点ですでに生じている国民負担が、食品の一分野で据え置かれたというだけにすぎない。それ以外の大部分は17年4月、10%へ上がる予定だ。景気低迷を理由に延期された消費税引き上げの再開の是非こそ、本来、俎上(そじょう)に載せるべきだった。

 消費税は広く国民に負担を求める税であり、低所得者対策は限定的にならざるを得ない。政府は本年度補正予算で低年金者へ3万円の給付を決めたが、試算では増税による家庭の負担はそれを上回る。

 なぜ増税しなければならないのか。今回の政府の議論からは、そもそもの理由が雲散霧消した。軽減税率の対象拡大という見掛けにこだわった議論は、補正予算を含め来夏の選挙対策という「与党の都合」に終始した。

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 企業の利益にかかる法人税の実効税率は、現行の32・11%を来年度29・97%、18年度29・74%に引き下げる。自動車の新税は、エコカー(低燃費車)の優遇など燃費に応じて4段階で課税する。両税に共通するのは、資金力のある方に有利な仕組みだ。

 政府は法人税減税により企業に賃上げや設備投資を促すというが、近年、企業の内部留保の積み増しと賃上げは必ずしも連動していない。減税分は赤字企業も対象となる外形標準課税でカバーするというが、同税は中小零細ほど影響が大きく、そこで働く労働者への影響が懸念される。

 「組織より個人へ」「大より小へ」負担を重くする政府の姿勢は、自動車新税にも現れている。購入時の割高感がぬぐえないエコカーは、軽自動車への適応が少ないなど、いまだ庶民の車とはなり得ていないからだ。

 TPP発効に備え、遊休農地の固定資産税は17年度から1・8倍に上げる一方、農地中間管理機構に10年貸せば半減する。意欲ある担い手への農地集約を目指すものだが、農業の人材不足がいわれる中での実効性は不透明だ。

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 一連の改正からは「国民への還元」という視点が見えない。15年度税収は、第2次安倍政権が誕生した12年度から12兆円以上増える見通し。政権はアベノミクス効果を喧伝(けんでん)するが、影にある国民負担こそ忘れてはなるまい。

 増税の目的はそもそも何だったのか。財政健全化と社会保障充実は、政府が最低限果たすべきことだ。