日本の国会に当たる中国の第13期全国人民代表大会(全人代)が北京で始まった。

 最も注目されるのは、国家主席の任期を撤廃する憲法改正案が提起されていることだ。11日の可決が確実視されている。

 1982年に全面改正された憲法は国家主席の任期を連続2期10年までと制限し、3選を禁止している。

 習近平氏は2013年に国家主席に就任した。改正がなければ、23年には国家主席を退かなければならないが、これで「終身支配」への道が開かれることになる。

 習氏は共産党総書記、党中央軍事委員会主席も兼務している。いずれも「2期10年」との規定はない。国家主席の任期が撤廃されれば、党、国家、軍とも半永久的に掌握することが可能になる。

 5年後に3選を目指すことが現実味を帯びているのは、昨秋の最高指導部人事で、習氏が後継者を指名しなかったことからも推測することができる。さらに、習氏はすでに指導部内で別格である党の「核心」に自身を位置付けているからだ。

 3選を禁止したのは、毛沢東時代の苦い教訓があるからだ。個人崇拝と権力集中による大規模政治運動「文化大革命」(1966~76年)で社会に大混乱を招いたことから、独裁に歯止めをかけ、集団指導体制を徹底する目的で、導入された。

 習氏に権力が集中し、個人独裁に逆戻りするのではないかとの懸念が拭えない。

■    ■

 憲法改正案には習氏の名前を冠した「習近平の新時代の中国の特色ある社会主義思想」のほか、「『中華民族の偉大な復興』の実現」「社会主義現代化強国の建設」など、自身が掲げるスローガンが軒並み書き込まれた。

 在任中に憲法に明記されるのは毛沢東思想以来である。習氏の権威が高まるのは間違いない。

 習氏が就任してから人権派弁護士や活動家らの身柄拘束など言論弾圧は厳しくなるばかりだ。昨年7月には国家政権転覆扇動罪で服役中だった民主活動家で、ノーベル平和賞を受賞した劉暁波氏が肝臓がんで死去した。中国政府は国外での自由な治療を最後まで認めなかった。国際社会から強い非難を受けたことを忘れてはならない。

 ネット上では憲法改正案に「独裁」などと反発の声が上がったが、規制されている。個人独裁になれば人権や言論をないがしろにする危惧は膨らむばかりである。

■    ■

 世界第2の経済大国となった中国には、軍事面でも懸念が広がる。

 全人代では2018年度予算案として約1兆1千億元(約18兆3千億円)の国防費を計上。前年度比8・1%増で、米国に次ぐ世界第2位の規模だ。しかし中国の国防費には、空母などの大型兵器や新兵器の開発費などは含まれていないとの指摘があり、実態は不透明である。

 中国には国際社会から信頼が得られるよう国際協調や人権擁護といった普遍的な価値を掲げ、地道に歩む国の姿もみせてもらいたい。