居酒屋チェーンを経営するワタミ子会社の新入社員の女性=当時(26)=が2008年に自殺したのは会社の責任だとして、両親が損害賠償を求めた訴訟は、東京地裁で和解が成立した。ワタミや創業者の渡辺美樹参院議員(自民)らが計約1億3千万円を支払い、自殺は過労が原因と認め謝罪するとの内容だ。

 若い人に過酷な労働を強い使い捨てにする「ブラック企業」が社会問題としてクローズアップされるきっかけとなった事件である。

 訴状や両親の陳述によると、女性は08年4月にワタミフードサービス(現ワタミ)に入社し、神奈川県内の店舗に配属された。午後から早朝にかけて十数時間の長時間勤務が続いた。仕事が終わるころには電車がなく、タクシー利用も認められないため社宅に戻れず、始発電車まで店内で過ごす日々だったという。

 休日などに本社での研修会に出席、渡辺氏の著書など課題図書のリポートを書いた。8時間労働、週休2日制という入社前の説明とはまったく違っていた。「24時間、死ぬまで働け」(渡辺氏)を地でいくような常軌を逸した労働実態である。

 和解条項では渡辺氏が最も重大な損害賠償責任を負うと認めている。渡辺氏は創業者で、同氏の理念に基づき会社経営していたからである。

 訴訟で当初、渡辺氏は法的責任について争う構えをみせていたが、和解で渡辺氏は法的責任を認め、謝罪した。ワタミがブラック企業の象徴となり、経営が悪化したことも影響したのだろう。労働者をモノのように扱うブラック企業に、持続的な発展を続けるのは困難ということである。

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 「どうか助けて下さい。誰か助けて下さい」。女性は悲痛な言葉をノートに書き残して入社からわずか2カ月後に自殺した。残業は月140時間以上に及び、過労が原因で適応障害を発症していた。12年に労災と認定された。

 新入社員の自殺というあまりにも大きい代償だが、和解条項には「過重労働再発防止策」が盛り込まれている。ワタミだけにとどまらず、ブラック企業の横行を防ぐ歯止めになり得る内容である。

 たとえば、タイムカードなどで実労働時間を正確に記録すること、研修会や課題作成に要した時間は業務とし、残業手当を支払うとともに長時間労働を防止すること、正社員を募集する際には実労働時間や休日・休暇の取得状況の実態を正確に説明すること-などを挙げている。

 まともな企業であれば、当然しなければならないことばかりである。

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 沖縄はどうだろうか。沖縄労働局が13年に27事業所を抜き打ちで立ち入り調査したことがある。長時間労働や残業代不払いなどが21事業所に上った。8割近くが労働基準法違反ということになる。

 沖縄は中小零細企業が多く、労働者を取り巻く環境は厳しい。賃金は低く、非正規は全国ワーストだ。完全失業率は、依然高止まり。

 国は監督体制を強め、労働者保護のため労働の質向上に向けて対策を急ぐべきだ。