選挙対策のにおいがぷんぷんする官邸主導の決着である。

 自民、公明両党は2017年4月の消費税率10%引き上げに際し、現行の8%に据え置く軽減税率の対象を、外食を除く食品全般とすることで合意した。

 軽減税率には、生活必需品にかかる消費税を低く抑えて家計負担を軽くする狙いがあるが、そのために必要な年間1兆円の財源は示されていない。課題を先送りした合意である。

 軽減税率導入をめぐる議論は、制度導入に積極的な公明党と、財政難を理由に慎重姿勢の自民党との間で難航した。生鮮食品と加工食品全体への適用を求める公明党と、生鮮食品に絞りたい自民党が対立。最終盤で自民党が外食を含めるよう提案するなど迷走し続けた。

 最終的な合意は、公明党の主張をほぼ丸のみした形である。米軍普天間飛行場の移設問題を左右する来年1月の宜野湾市長選、憲法改正への布石とする夏の参院選をにらんで安倍晋三首相が歩み寄ったのだという。公明党の支持母体、創価学会の集票活動に期待を寄せてのことだ。

 安倍首相は10月にも、軽減税率導入に慎重だった自民党税制調査会の野田毅会長(当時)を更迭している。「首相1強体制」の下、官邸主導の局面が増え、税調の存在感は薄れている。

 低所得者支援など必要な議論が脇に押しやられたのは、「1強」の歪みで、自由な議論が封じられたためでもある。

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 すべての人を対象とする軽減税率は、高い食材を購入するなど富裕層に有利に働く。低所得者の痛税感を和らげることを目的にしながら、実際はそのような制度設計にもなっていない。

 軽減税率の導入を手放しで喜べない人が多いのは、それ以外の税率が2桁になる影響が大きいからだ。結局、低所得者ほど負担が増す消費税の「逆進性」は解消されない。

 財源問題では、不足する1兆円のうち4千億円を低所得者対策の「総合合算制度」の見送りで対応する考えという。合算制度は医療や介護の自己負担額に世帯ごとの上限を設けて負担を軽減する仕組みである。財源確保を名目に社会保障を削るのは矛盾する政策だ。

 さらに残りの6千億円については、参院選後に議論を引き延ばすという無責任な対応である。

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 そもそも12年に自民、民主、公明3党で決めた「社会保障と税の一体改革」は、消費税率引き上げの増収分を全て社会保障に充てるというものだった。今回の合意はそれに反するもので、このままでは一体改革自体が破綻しかねない。

 深刻な財政難の中、財源をどう捻出するのか、約束した社会保障は実現できるのか、政府与党には年明けの通常国会で、国民の疑問や不安に答えてもらいたい。

 野党も低所得者対策の実効性や選挙目当てにしか見えない合意への追及を強めるべきだ。