「結婚して夫の姓に変わり、子どもが生まれると今度は『○○ちゃんのお母さん』と呼ばれる。社会から自分が無くなるみたい」

 ▼寂しげな知人の表情が忘れられない。「子どもや夫は大切。でも、それとこれとは別なんだよね」と続いた。共に生きる伴侶を得たら、彼女だけが共に生きた姓を失い、喪失感を抱く

 ▼あれから二十数年。マンションなど集合住宅の表札に、二つの姓が並ぶのは珍しくなくなった。「寿退社」が死語になりつつある中、上場企業などの6割強が旧姓使用を認めているという調査結果もある

 ▼政治がもたもたして「選択的夫婦別姓」を盛り込む民法の改正案を国会へ提出できない間に、現実の社会で女性の旧姓使用による「夫婦別姓」が広がってきたと実感する。つまり、旧姓が使えない公的な文書などで煩雑な作業や不都合にぶつかる女性が増えていることを意味する

 ▼このまま旧姓で活躍する女性が増えれば、実態として戸籍姓は意味をなさなくなる。そんな中で最高裁があす、夫婦は同姓を名乗ると定めた民法の規定が違憲かどうかを争った訴訟の判決を出す

 ▼そもそも、夫婦同姓を名乗るよう義務づけた国は日本だけ。同性婚が認められる時代にふさわしいのは多様な家族のあり方を認め、寛容になることだ。そんな社会につながる判決を期待したい。(与那嶺一枝)