韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領と北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長が4月末に板門店で会談することになった。

 韓国の大統領府が6日に発表した南北合意の中身は、当事者である韓国政府自身が驚くような、踏み込んだ内容となっている。

 一、北朝鮮は、朝鮮半島非核化の意思を明確にし、体制の安全が保証されれば核を保有する理由がないという点を明白にした。

 一、北朝鮮は非核化問題の協議と米朝関係正常化のため、米国と虚心坦懐(たんかい)に対話する用意がある。

 一、対話が続く間、北朝鮮は追加の核実験および弾道ミサイル発射実験など戦略的挑発を再開することはない。

 正恩氏は韓国特使団との会談で、4月に予定されている米韓合同軍事演習を例年と同規模で行うことにも「理解する」姿勢を示したという。

 北朝鮮の方針転換の背景には何があるのか。

 正恩氏は「経済建設と核武力建設の並進路線」を国づくりの基本方針に掲げてきた。今年の9月9日は、建国70年の節目にあたり、国民に向かって並進路線の成果を目に見える形で示す必要に迫られていた。

 ところが、実際は米国や国連の経済制裁に中国まで加わるようになり、経済の立て直しは全く進んでいない。トランプ米大統領の下で米国による先制攻撃の可能性も高まる一方だった。

 正恩氏の路線転換は、日米の圧力路線と韓国の文在寅政権の対話路線が絶妙に作用し合った結果、だといえる。

■    ■

 日米とも「当面は圧力を高めつつ、状況を慎重に見極める」との姿勢を崩していない。過去に何度も合意を踏みにじられてきた苦い経験があるからだ。

 米朝対話を実現するには、さまざまな困難が横たわっている。依然としてハードルは高い。日本の新聞やテレビも「楽観は禁物」という論調が目立つ。

 ただ、トランプ大統領は首脳会談の実施などを「非常に前向きだ」「進展があったことは疑いない」と評価し、局面打開への期待を表明してもいる。

 対話の足を引っ張ろうと思えば、その材料には事欠かない。融和路線の危うさを指摘しようと思えば、その材料には事欠かない。

 そうやって朝鮮半島非核化への希望の芽を摘みとるのではなく、どうすれば状況を一歩でも前へ進めることができるのかを考え、建設的な姿勢で条件整備に努めることを日米に求めたい。

■    ■

 4月の南北首脳会談を歴史的な米朝会談の実現につなげ、米朝会談を朝鮮半島非核化の突破口にしてほしい。

 そのためには、米朝首脳が相手をののしったり侮辱したり、感情にまかせて罵詈雑言をはくような態度を慎むことが前提だ。

 日米韓の結束を固めることも重要である。安倍政権が圧力一辺倒の政策を続けると、日本だけが孤立するおそれもある。「危機」を「機会」につなげる。そのための努力を惜しんではならない。