北中城中学校3年で、重度の知的障がいのある仲村伊織さん(15)が6、7の両日、沖縄県立高校の一般入試に臨んだ。同様の障がいがある生徒が特別支援学校ではなく、普通高校を受験するのは県内で初めて。障がいの有無にかかわらず共に学ぶインクルーシブ教育の理念が広がる中で、「地域や社会とつながりが持てる生き方を」と願う仲村さん親子の挑戦は、従来の障がい児教育に一石を投じている。

同級生に抱えられながらリレーを走る仲村伊織さん=2017年(家族提供)

◆「伊織らしい」「いるのが当たり前」

 伊織さんは就学前に特別支援学校を勧められたものの、地元の島袋小の普通学級に入り、北中城中の特別支援学級に進んだ。伊織さんがふいに寝転んでも、同級生たちは「伊織らしいなー」「いるのが当たり前。かえってクラスがまとまる」と意に介さない。

 昨年の校内陸上のリレー。アンカーの伊織さんが暑さでへたり込みそうになると、同級生たちが励ましながら伴走した。追い抜いた別のクラスの子も途中で引き返し、一緒に抱きかかえてゴールした。

 「同世代の仲間たちと関わり合いながら過ごすことが、この子の自立や幸せにつながる」。父晃さん(52)、母美和さん(49)は確信した。

 「特別支援学校ではきめ細かい教育が受けられるかもしれないが、障がいのない人たちや地域とのつながりは限られる。親がいなくなった後も、社会の一員としてできるだけ自立して生きていくために、普通高校という選択肢があっていいはずだ」。両親はそう考えている。

◆県外で広がるインクルーシブ教育

 県教育委員会は伊織さんの受験で、介助者の同席や高校側職員による解答代筆を認めた。ただ合否判定で特別扱いはせず、教育課程をこなせる学力がなければ受け入れは難しいとの立場に変わりはない。

 「障害児を普通学校へ・全国連絡会」によると、県外では「定員に余裕がある場合は不合格者を出さない」との方針に基づき、重度の知的障がい者を公立高校が受け入れている例がある。大阪府や神奈川県が軽度を想定した特別枠を設けるなど、インクルーシブ教育は義務教育段階を超えて高校にも広がりつつある。

 県立高校の合格発表は13日。もし落ちても、仲村さん一家は2次募集や来年度の受験に備える予定だ。

 両親は「これまで何度も心が折れかけたが、友だちと楽しそうに笑う息子の笑顔に支えられてきた」と語る。「勉強はできなくても、成長を共有できる機会そのものが宝物。共生社会は共に学ぶ教室からだと信じています」と、普通高校の門をくぐれる日を心待ちにしている。(社会部・鈴木実)