【沖縄タイムス県産品応援新聞 かなさうちなーむん 第98号】

島桑のお茶やパウダーを製造している浦添市シルバー人材センター会員の専属チームの皆さん=浦添市伊奈武瀬の養蚕絹織物施設サンシルク(撮影・古謝克公)

 島言葉で「クヮーギ」「ナンデンシー」と呼ばれる沖縄在来の桑「島桑」(シマグワ)。絹糸を作るため、蚕のエサとして全国各地で植栽されるようになった桑は、昔から薬草としても用いられ、沖縄でも体に良い植物として親しまれてきた。近年、沖縄工業高等専門学校の研究で、沖縄の島桑は本土の品種に比べ、血糖値の上昇を抑える成分が豊富に含まれていることが分かってきた。

 その島桑を生産し、まちの特産品作りに力を入れているのが浦添市シルバー人材センターだ。年間20トンの葉を収穫し、お茶やパウダーなどを製造している。栽培、収穫、製造の現場を支えているのが60〜90代の元気なシニアたち。農薬を使わず、丁寧に育てられた太陽の恵み「島桑」は、健康・美容分野で新しい沖縄の宝として注目されている。

■浦添の太陽の恵み

 12年前、浦添市の絹織物事業に伴い始まった桑の生産。1年のうち、養蚕に適した葉の収穫は春と秋のみ。栽培・収穫を請け負う浦添市シルバー人材センター会員として携わることになった島袋幸子さん(75)は当時、季節外れの葉が大量に捨てられるのを見て「イチャサンサー」(もったいない)と感じていた。

搬入された島桑の枝から手早く葉を摘んでいく。右は島桑のお茶作りを提案した浦添市シルバー人材センター会員の島袋幸子さん
乾燥させた島桑は粉砕してパウダーに加工。茶葉も合わせると年間2トンの商品が生産されている

 そこで自身のふるさと大宜味村の高齢者が葉を蒸して焙煎(ばいせん)し、お茶にしていた記憶を頼りに、フライパンやホットプレートを使って茶葉づくりに挑戦。市役所を訪れる市民や物産展などで試飲してもらい、試行錯誤を重ねた。

 試作から6年。徐々に工場の設備も整い、外部の加工業者との連携も進み、お茶のほか、新たにパウダー製造も始まった。健康志向の高まりを受け、県内外への出荷量は順調に伸びており、現在、畑は浦添市、西原町、糸満市にまで広がっている。

 パウダーを活用したパンやスイーツなどを作る市内業者も増え、島袋さんは「まさか、こんな日が来るとは思わなかった。商品のリピーター客から、よくここまで頑張ったねと言われた」と振り返る。

島桑畑の作業は男性シルバー会員が主に担当。市内の耕作放棄地などを活用し、雇用促進と地域活性化にもつながっている=浦添市内

■特産品支える元気シニア

 年間約3トンだった葉の収量は、現在20トンまで増加。同市伊奈武瀬にある養蚕絹織物施設「サンシルク」では、島袋さんら会員6人の“島桑レディース”が「専属チーム」として、搬入された枝から葉を摘む作業と加工を任されている。

 葉落としの作業室。枝から手早く葉を摘み取りながら、おしゃべりにも花が咲く。皆、パウダーを溶かしたペットボトルを持参。パウダーはドレッシングやサーターアンダギーの生地に混ぜたり、茶葉に使用しない新芽部分はおひたしやヒージャー汁、ボロボロジューシーなどの料理にも活用しているという。

 衛生管理や加工作業など覚えることは多いが、気の置けない仲間たちと、まちの特産品を作る誇りと喜びをかみしめる日々が続く。

 「高齢者という自覚はないよ。みんなで楽しく作っているから、飲む人にも笑顔のパワーが伝わる。これが売れている理由さー」

■島桑の持つパワー! 研究者に聞きました

 浦添市、浦添市シルバー人材センターと連携し、島桑の機能性成分の研究などを進めている沖縄工業高等専門学校の研究グループメンバー・久米大祐講師(総合科学科、健康科学博士)に、島桑の持つパワーについて聞いた。

久米大祐講師

−本土の桑と島桑の違いは?

 まず品種そのものが違う。本土の桑は冬季に落葉し休眠するのに対し、島桑は年中落葉しない。生育環境も違うため、葉と実の成長に差が出るとみている。桑葉の代表的な機能性成分としてあげられる1−DNJ含量は、島桑は本土の代表的な桑品種(一ノ瀬)と比べて約2・4倍、糖の吸収を遅らせるα−グルコシダーゼ阻害率は約26%高いことが分かっている。

 また、加工前の葉と比べ、乾燥・粉砕などの処理によって機能性成分含量はやや減少するが、α−グルコシダーゼ阻害率には顕著な差は見られなかった

−ヒトでの実証結果は?

 浦添市役所の職員15名(男性6名・女性9名)を対象としてヒト試験を行った。桑茶パウダーで作った桑茶もしくは同量の白湯を飲んでもらい、その15分後に砂糖水を摂取させ、血糖値とインスリン濃度を測定した。その結果、白湯を飲んだ条件と比べ、桑茶を飲んだ条件では砂糖水摂取後の急激な血糖値上昇が抑制され、インスリン濃度の変化も緩やかだった。

−桑の葉を普段の食生活に健康的に取り入れるには?

 桑の葉は、あくまでも食品。健康維持のためにはバランスのとれた食事と適度な運動を心がけることが何よりも大切。その上で、毎日の食事と一緒にいただくと、桑の葉の持つ栄養成分や機能性成分も摂取できて、より健康的な食生活を送ることができるのではないか。食事に彩りを添えるという楽しみもある。

 また現在、サン食品、沖縄製粉と共同で沖縄そば、パン用商品の開発も進めており、島桑の有効成分を生かした低GI食品への応用にも挑戦している。沖縄県は肥満率も高く、糖尿病予備軍も増加し、深刻な状況にある。島桑は県民の健康維持に貢献できる大きな可能性を秘めている。

【桑葉の栄養成分】てだ桑茶パウダー2g(小さじ1杯分)にはカルシウムが72mg含まれており、60歳以上の女性で1日に不足とされる摂取量の約52%を補給できる。食物繊維なら900mg含まれており、同様に81%を補給できる。さらに鉄分は小松菜の7.5倍、β−カロテンはニンジン(ゆで)の2.7倍含まれており、タンパク質やギャバといった栄養素も多く含んでいる。

島桑の主な栄養成分

【桑葉の有用成分】桑葉の代表的な機能性成として挙げられるのが1−DNJ(1−デオキシノジリマイシン)。摂取した糖分は、消化管で消化された後、最終的には小腸上皮にあるα−グルコシダーゼと呼ばれる酵素によって、ブドウ糖に分解され、体に吸収される。1−DNJは、このα−グルコシダーゼを阻害することにより、糖の吸収を遅延させるため、食後の急激な血糖値上昇やインスリンの過分泌を抑制する作用があるとされている。

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