「家制度」を重視した明治民法で設けられた二つの規定をめぐって、最高裁が示した判決は「時代の要請」から遠いものだった。

 最高裁大法廷は、夫婦別姓を認めない規定を「合憲」とし、女性にだけ6カ月の再婚禁止期間を定めた規定を「100日を超える部分は違憲」と初判断した。

 国内では20年近くも前に法制審議会が民法改正案を答申し、国連女性差別撤廃委員会が何度も廃止を求めてきた差別的な制度である。再婚禁止についても女性にのみ制約を課す期間は残り、本質的な問題には踏み込まなかった。

 「夫婦は婚姻の際に定めるところに従い、夫または妻の氏を称する」とした民法規定をめぐる夫婦別姓訴訟で、原告が訴えたのは「規定は姓の変更の強制で権利侵害」。

 これに対し最高裁は「規定に形式的な不平等はない」「不利益は通称使用で緩和できる」との判決を言い渡した。

 一見平等に見えても、女性の約96%が改姓している現実は明らかに偏っている。通称使用に関しても運転免許証など原則戸籍名しか認めないものも多く、煩雑さから使用を断念する人が少なくない。

 原告の一人、塚本協子さん(80)が「名前はどうしても譲れないもの」と語ったことが印象に残る。姓を変えることで生じた不便や違和感、自己喪失感など、いろいろな思いが詰まった言葉だ。

 法律で夫婦同姓を規定する国は日本以外になく、世界標準から大きく乖離(かいり)している。今回、15人いる裁判官のうち、3人の女性裁判官全員が違憲の反対意見を述べたことは留意しなければならない。

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 「女は、前婚の解消または取り消しの日から6カ月を経過した後でなければ、再婚をすることができない」とする民法規定について、最高裁は「100日を超える禁止は過剰な制約だ」と指摘した。

 この問題は民法の嫡出子推定規定とも関連し、「子どもの父親が誰か」混乱を防ぐためのものだが、重複を避けるなら100日で足りると判断したようだ。

 100日に短縮されたとはいえ、女性だけに禁止期間を設けることに変わりはない。

 医療や科学技術の発達で妊娠の判断やDNA鑑定による父子関係の判定はより早く、より正確になった。

 「規定は全部が違憲」とする反対意見があったことからも分かるように、女性だけに禁止期間を設ける合理的理由は見当たらない。

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 今や離婚件数が婚姻の3分の1に上り、4組に1組は夫婦あるいは一方が再婚のカップルである。同性カップルを「結婚に相当する関係」と認める動きも広がるなど、生き方も家族のあり方も多様化している。

 最高裁は選択的夫婦別姓について「国会で論じられるべきだ」とボールを返した。今の時代にふさわしい法律の整備を立法府に促したのだ。

 古い家族観に基づく制度を放置したまま、安倍政権が「女性の活躍」を叫んでも言葉が踊るだけである。

 国会は立法化に踏み出すべきだ。