トランプ米大統領が、北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長の提案に応じ、5月末までに会談する意向を表明した。

 朝鮮戦争以来、70年近くも敵対関係にある国のトップ同士が直接顔を合わせるという歴史的な決断である。

 4月末に予定されている南北首脳会談に引き続き、米朝首脳会談が実現すれば、朝鮮半島非核化に向けた動きが一気に加速する可能性がある。東アジアの国際政治に大きな影響を与えるのは間違いない。 

 軍事衝突の危機が取り沙汰されていた昨年までの緊張がうそのようだ。

 トランプ氏は先の南北会談で、金氏が非核化と核・ミサイル実験凍結に言及したことを評価したという。

 北朝鮮側の軟化の背景にあるのは、トランプ政権下で米国による先制攻撃が高まっていることへの懸念である。中国まで加わって国際社会が経済的圧力を強めていることも大きい。

 さらに北朝鮮への圧力を維持しつつ融和路線を並行して進めるという韓国・文在寅(ムンジェイン)政権の対応も路線転換を促す役割を果たした。

 非核化を巡る過去の合意が裏切られてきた歴史があるだけに、楽観はできない。経済支援だけを懐に入れる「食い逃げ」を防ぐためにも、対話のテーブルに着く前に、北朝鮮の本気度を見極める必要があるだろう。

 ただ初めてとなる首脳会談は朝鮮半島非核化に向けた歴史的な機会である。交渉が決裂した後の事を考えれば、双方にとって失敗の許されない会談だ。

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 米朝首脳会談の動きを踏まえ、安倍晋三首相はトランプ氏と電話会談し、4月初旬にも訪米することで合意した。

 対話を拒み、圧力一辺倒の政策を取り続ける日本政府にとって、急転直下の首脳会談開催は想定外の出来事だったのではないか。

 電話会談では北朝鮮が核・ミサイル開発放棄へ具体的行動を取るまで、最大限の圧力をかける考えを改めて共有したという。

 北朝鮮の行動を慎重に見極める必要はあるが、圧力一辺倒では局面転換のスピードについて行けず、日本だけ置き去りにされる心配もある。

 北朝鮮による拉致被害者家族からは「膠着(こうちゃく)状態にある拉致問題解決のチャンス」との声が上がっている。

 米朝が直接対話に踏み出す機会に、拉致問題も議題に取り上げるよう働き掛けることが大切だ。

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 厳密にいえば、非核化を巡って日米韓の利害が完全に一致しているわけではない。南北首脳会談と米朝首脳会談を非核化につなげていくためには、日米韓の協調体制を維持することが欠かせない。

 日本には、日韓両国の間に横たわる溝を埋める外交力が求められている。

 朝鮮半島非核化と緊張緩和は、米軍基地が集中する沖縄にとっても大きな関心事である。

 朝鮮半島非核化と緊張緩和への努力を中国、ロシアを含めた全ての関係国に求めたい。