名護市辺野古の新基地建設をめぐり、住民が仲井真弘多前知事の埋め立て承認取り消しなどを求めた訴訟で、被告の県がこれまでの姿勢を転換し、承認に瑕疵(かし)を認める主張をまとめていたことが18日、分かった。実質的に原告の住民側と同じ主張になり、今後の裁判の構図に変化をもたらしそうだ。(国吉聡志、松崎敏朗)

辺野古住民訴訟の構図

 提訴は2014年1月で、県が方向性を変えたことは11月30日付で那覇地裁に提出した準備書面で明らかになった。書面によると、辺野古の新基地建設に対し「埋め立ての必要性」は根拠に乏しいと指摘。公有水面埋立法4条の要件も満たさないと主張している。

 仲井真県政時代、県側は「知事の承認は適法で、原告らには訴訟をする資格(原告適格)がない」などと却下を求めていた。ところが、翁長雄志知事の就任後は、態度を明らかにしていなかった。今回、主張を明確にしたことについて、県海岸防災課の担当者は、第三者委員会が埋め立て承認に「法的な瑕疵がある」とした結論と整合性を取ったと説明する。

 原告の弁護団事務局長を務める三宅俊司弁護士は「被告が主張を変え、原告と同様の立場になるのは行政訴訟ではあまり聞いたことはない。珍しいケースだ」と話す。県の主張が原告と重なることは認めつつ、仲井真前知事の埋め立て承認に効力が残っていることを挙げて「訴えは取り下げない」と述べた。

■住民、国と全面対決へ

 住民が埋め立て承認取り消しなどを求めた「辺野古埋め立て承認取り消し訴訟」で、県は承認に瑕疵(かし)があることを認めた。住民側と同じ立場になった県は今後、反論は控え、第三者として訴訟に参加した国と住民が、仲井真弘多前知事の承認の適法性などをめぐって全面的に争う見込みだ。

 「矛盾する(これまでの)被告の主張は撤回する」。県側が先月末に提出した第4準備書面で、主張を180度転換させた。第三者委員会の報告以降も態度を明確にしなかった県だが、国から代執行訴訟を提起されたため、新基地建設に反対する「翁長色」を鮮明に打ち出したとみられる。

 県は仲井真県政時代に、海や湖などの公有水面は国の管理下にあり、国が水面の埋め立てを判断すると指摘。「都道府県知事の承認によって、初めて埋立権が与えられるものではない」とした。ところが、同書面では「都道府県知事の承認により、初めて埋め立て工事ができるようになる」と知事による埋立権付与を認めている。

 今後も埋め立て承認をした県は被告であり続けるが、住民側弁護士は「県は今後も、大きな主張はしないだろう」と予想する。住民側と主張が重なるので、大きな反論はないとの見立てだ。

 「今後、国の訴訟参加の適格性が争われることが考えられる」。成蹊大学法科大学院の武田真一郎教授(行政法)は読む。国は裁判の途中から「承認が取り消されると、埋め立て工事をする権利が害される」として訴訟に参加した。しかし、「裁判で権利が害される第三者に当たらない」などとする主張を県が打ち出し、裁判所が認めれば、国は裁判に参加できなくなると指摘。県と住民側の和解の道も開かれるとした。