沖縄戦で父親を防衛隊にとられ、船で渡った九州の疎開先で、家族5人のうち過労と栄養失調で母親、妹がなくなる地獄を体験した。だが、きょうだいを引き取ってくれた寺が人生の転機に

 ▼読書家だった住職の数千冊の蔵書を手当たり次第に読みふけった。新渡戸稲造の留学記に衝撃を受け、ラジオの英会話に夢中になる。いつの間にか軍国少年が外国文学研究者になる夢を持つようになった

 ▼アイルランド文芸復興の詩人イエーツの世界的な研究者、米須興文さんが17日、亡くなった。83歳。沖縄で初めて米国の大学で博士号を取得し、英文でイエーツ研究の本を出版するなど、国際的に高い評価を得た

 ▼アイルランドと沖縄の共通点に着目した。明治政府による標準語強制、戦後、しまくとぅばが急速に失われていく過程、アイデンティティー危機が叫ばれる状況など、アイルランドの軌跡と符号すると

 ▼琉大時代の教え子の1人は「いちずに学問に燃えていた厳格な人」と語り、「一見厳しそうだが、権威を振りかざさず、親しみを持って学生目線で話してくれた」と振り返った

 ▼研究などで沖縄を離れて長期間の海外生活を送ったが、外にあっても沖縄の中にあっても、絶えず沖縄を見つめ続けた米須さん。現在の沖縄、将来の沖縄をどう見ていたのだろうか。合掌。(玉寄興也)