政府は、総額3兆3213億円にのぼる2015年度補正予算案を閣議決定した。

 自民、公明両党が合意した消費増税に伴う軽減税率といい、18日に閣議決定された補正予算案といい、選挙対策の色合いが濃厚である。

 軽減税率で公明党側の主張を受け入れ、自民・公明両党の選挙協力を強化する。

 所得の低い高齢者向けに補正予算で1人当たり3万円の臨時給付金を参院選の前後に現金で配る。

 環太平洋連携協定(TPP)の発効に備え対策経費を計上し、農林漁業者の不満解消を図る。

 そうやって来年1月の宜野湾市長選と同7月の参院選に大勝する。安倍官邸がその先に見すえているのは、名護市辺野古の新基地建設と憲法改正である。

 補正予算案には「1億総活躍社会」の実現に向けた経費1兆1646億円が計上された。その3割にあたる3624億円は、所得の低い高齢者(65歳以上)に配る1人当たり3万円の臨時給付金に充てられる。

 個人消費を喚起し、景気を底上げするのが狙いだが、政策効果ははっきりしない。

 14年度から支給されている子育て世帯臨時特例給付金は、16年度の支給が見送られた。なぜ子育て支援策を打ち切って高齢者向けの現金支給策を打ち出したのか。

 臨時給付金は参院選の前後に現金を配るという。投票率が高い高齢者を意識した選挙向けの「ばらまき政策」と批判されても仕方がない露骨なやり方だ。

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 宜野湾市長選も参院選も、政治的な意味の大きい選挙である。安倍官邸は選挙で頭がいっぱいなのだろう。

 その現実を税制改正作業という密室の舞台で演じてしまったのが、軽減税率をめぐる官邸、自民党、公明党の迷走劇である。

 軽減税率を導入するのであれば、対象品目の線引きだけでなく、必要な財源をどうやって確保するかを並行して議論し決めなければならない。

 だが、首相官邸は、公明党との選挙協力を優先し、創価学会の要求を受け入れるよう自民党に求めた。

 その結果、軽減税率導入に必要な約1兆円の恒久財源の確保や社会保障の制度設計は後回しにされ、財政健全化にも不透明感が増すことになった。

 しかも、安定財源の「本格的な検討は参院選が終わってから」というのである。本末転倒、刹那主義もここに極まれり、というほかない。

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 軽減税率導入によって地方の収入が年3千億円程度減るとして全国知事会は、高市早苗総務相に対し社会保障関連の政策に充てる代わりの財源を確保するよう要請した。

 財源のあてもないまま軽減税率を導入し、そのために社会保障が後退するようでは話があべこべだ。政府は来年1月4日に召集される通常国会で説明責任を果たさなければならない。

 野党の真価が問われるときでもある。ここで存在感を発揮しなければ再生の道はない。