社員30人の食品会社で、月末の給与計算のため、人事課長が営業課長に残業報告時間の確認をしている。

 人事課長 営業課から報告された残業時間、思ったより少なく感じるんだけど、問題ないだろうね?

 営業課長 ああ、もちろん。サインは私だが、それぞれ部下が自分で管理して残業報告書を書いているよ。

 人事課長 それじゃあ、君は部下に任せっきりで、労働時間の把握はしていないのかい? それでは困るよ。本人の自己申告であっても、会社は、記録された労働時間が正しいかどうか確認して適切に管理する必要があるんだよ。

 営業課長 自己責任では駄目なのかい? これまで何の疑いもなく残業報告書にサインしてきたが、中身もしっかり確認しなくてはならないんだね。

 人事課長 会社責任になるんだよ。タイムカードで労働時間を管理していても、パソコンの操作記録や警備記録と比べて大幅に違うとなると大変だ。「本人に任せていた」「知らなかった」では済まされない。会社が適切に管理していないと、割増賃金の未払いや長時間労働といった問題が実際に生じる。労働基準監督署も監督指導を強化しているよ。

 営業課長 それは大変だ。労働時間や残業報告書の記載方法をうちの課で説明してくれないか?

 人事課長 分かった。それなら課長会議で勉強会をしよう。会社の顧問社労士にも相談してみるよ。
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 この会社ではさっそく課長会議で社労士による「労働時間管理」の勉強会を開催。全社員への研修会も行い、人事課長による定期的な労務管理の抜き打ちチェックが実施されることになった。

[気になる数字]127億2327万円

 労働基準監督署の是正指導により、全国で支払われた残業代などの割増賃金合計額(2016年度、厚生労働省)

[気になる言葉]過重労働撲滅特別対策班(通称かとく)

 過重労働撲滅のために労働基準監督官で構成された特別チームで、2015年に厚生労働省東京労働局と大阪労働局に設置された。支店も含めた企業への監督指導、高度な捜査技術を必要とする案件を扱う。かとくにより、「ABCマート」「電通」「ドン・キホーテ」といった大手企業が書類送検された。17年には47都道府県の各労働局に長時間労働の監督指導を専門に担当する「過重労働特別監督管理官」が配置され、監督体制が強化されている。労働時間の適正把握に関する情報は、厚生労働省のガイドライン「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置」が参考になる。(社労士・玉寄智恵子)

県社労士会:電話098(863)3180