この国の司法の課題を露呈した決定だ。

 福井地裁が、関西電力高浜原発3、4号機(福井県高浜町)の再稼働差し止めを命じたことし4月の仮処分を取り消す決定をした。関電が異議を申し立てていた。仮処分の取り消しで、高浜原発は来月にも順次運転を始める。

 原発の再稼働は、行政手続き上も、作業上も複雑で長い工程が必要だ。差し止め決定後も、関電は高浜原発の再稼働に向けた作業を着々と進めてきた。今月22日には西川一誠知事の同意を得て地元同意手続きを完了。現在、原子力規制委員会による使用前検査が行われており、25日には原子炉に燃料を入れる作業を始める計画を示している。

 そうしたさなかの仮処分取り消しは、司法もまた、再稼働に向けた「手続き」の一つにすぎないことを示しているかのようだ。

 前回の差し止め決定で福井地裁は、電力会社が原発の耐震設計で最大の揺れと想定する「基準地震動」を超す地震に、すでに5回も襲われていることを挙げるなど新規制基準そのものに疑義を呈した。

 一方、今回は「新規制基準の枠組みは合理的」とし、「関電の基準地震動が新規制基準に適合するとした規制委の判断は合理的だ」とし、関電側主張の追認にとどまった。

 こうした追認型の判断は、1992年の四国電力伊方原発訴訟で最高裁が、原発の安全審査について「行政側の合理的な判断に委ねられる」としたことによる。

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 原発訴訟では、もっぱら行政判断の合理性に重点を置いて審査された結果、これまでほぼすべてで国や電力会社側が勝訴してきた。そうした司法の「前提」は、福島第1原発事故後、根拠無き原発安全神話を補強する側面を担ってきたというほかない。

 今決定は、画期的な前回決定から先祖返りした。決定文は司法審査の在り方について「新規制基準の内容や、規制委による新規制基準への適合性判断が合理的かどうか、という観点から判断すべきだ」としており、原発事故の反省は全く生かされていない。

 高浜原発は、避難計画の策定が義務づけられる半径30キロ圏内に、福井県以外に京都府と滋賀県が入る。両府県は関電に対し福井並みの同意権を求めているが、来月締結予定の原子力安全協定には盛り込まれない見込みだ。

 福井の同意を取り付けた関電にとって唯一の障害が差し止め決定という状況下での仮処分取り消しは、追認以上の意味を持つ。

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 福井地裁は今回、並行して審理を進めていた大飯原発3、4号機(福井県おおい町)の再稼働差し止め仮処分も却下する決定を出した。本来、別だった審理の一本化は裁判所側が提案した。結果として同地裁は4基に一括して再稼働のお墨付きを与えた。

 原発の再稼働をめぐり司法が判断すべきは何なのか。「行政判断の合理性」だけではあまりに偏った判断と言わざるを得ない。

 司法こそ、国民や専門家の声にもっと耳を傾けるべきである。