夜空にきらめく満天の星。草むらに寝転がり、流れ星を見つけては歓声を上げた。宇宙の大きさの一端に触れるような新鮮な驚き。訃報を聞き、遠くなっていた少年の頃の体験を思いだした

▼宇宙創成の謎に挑み続けた英国のスティーブン・ホーキング博士(76)が死去した。大学院に通う21歳の時に全身の筋肉が萎縮していく難病の筋萎縮性側索硬化症(ALS)と診断され医師から「余命2年」と宣告を受ける

▼絶望を味わい、車いす生活を余儀なくされながらも研究者となった。ブラックホールがエネルギーを失って消える「蒸発理論」などを提唱。平易な言葉で一般の人に宇宙の魅力を伝え続けた

▼「人生とはできることに集中することであり、できないことを悔やむことではない」。晩年は声も失っていたが、コンピューターによる人工音声で語りかけた

▼災害や地球温暖化による人類の滅亡を警告。移住可能な太陽系以外の惑星や生命体を捜す小型探索機の開発計画を進めていた。核や人工知能(AI)など科学の進歩がもたらす人類への脅威にも警鐘を鳴らした

▼ロンドン・パラリンピックの開会式では、障がい者への偏見をなくすことを訴えた。「足元ではなく、星を見上げよ。興味を抱け」。車いすから宇宙を見つめ続け、人間の尊厳と可能性を自ら体現した生涯だった。(知念清張)