国と県が互いを提訴する前代未聞の事態である。

 沖縄県は、翁長雄志知事による辺野古沿岸部の埋め立て承認取り消し処分の効力を停止した国の決定を違法だとして那覇地裁に提訴した。

 提訴にいたった理由を知事は、「心情的にはやむにやまれずだ。国の強権的な手法の一つ一つを考えると、県民の誇りと尊厳を守るためにやむを得なかった」と説明する。

 この短い言葉の中に、知事の思い、多くの県民の思いが集約されている。

 事のいきさつはこうだ。

 米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設をめぐり、10月に翁長知事が前知事の埋め立て承認を取り消した。これに対し防衛省沖縄防衛局は取り消しの効力を止めるよう国土交通相に申し立て、国交相は執行停止を決めた。

 今回、県は提訴と併せ、国交相決定の効力停止も地裁に申し立てた。生物多様性に富む辺野古の海を守るため、判決を待たずに埋め立て本体工事を止める狙いからだ。

 県が強調しているのは次の2点である。

 「行政不服審査法は国民の権利利益の救済を図るもので、国の行政機関である防衛局が『私人』であると主張するのは法の趣旨にもとる」

 「同じ内閣の一員である国交相に中立・公正な判断は期待できない」

 県が指摘するように、政府の一連の対応には法の恣意(しい)的な解釈や形式的な運用が目立つ。その結果、憲法でうたわれた地方自治そのものが脅かされているのである。 

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 県が国を提訴した前日、国地方係争処理委員会は、国交相による辺野古埋め立て承認取り消しの執行停止を不服とする翁長知事の申し出を「審査対象に該当しない」と判断し、却下した。 

 法に基づき公正な解決を図る機会でもあった係争処理委が、本質的な議論に入る前に、知事の申し出を門前払いしたことは疑問を残す。

 却下の理由は「国交相の判断が一見、明白に不合理とは言えない」とするが、判断基準や多数決で決定した議論の内容は明らかにされていない。審査期限は来年1月末までとなっているのに、深夜0時近くまで議論し結論を出すやり方も尋常ではない。

 年明けの宜野湾市長選を意識し政府の力が働いたのではないか、という疑いさえ感じさせる決め方である。

 地方分権推進一括法によって国と自治体の関係は「上下」から「対等」に改められた。しかし国の強権的な手法や係争処理委の門前払い判断は、対等という言葉の意味を真に理解しているとは言い難い。

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 1972年の施政権返還から今年で43年。この間沖縄の人々が嫌というほど味わってきたのは、地位協定と関連取り決めにがんじがらめにされ、地方自治も人権も他府県並みに享受できないという理不尽な現実である。

 日本は今や世界でも米軍を数多く受け入れ、優遇している国になったが、沖縄のような事例は世界中どこにもない。その異常性を認識することが、この問題の出発点でなければならない。