毎月の基本給を引き上げるベースアップ(ベア)が焦点となった2018年春闘で、自動車、電機、造船重機などの主要企業が賃上げを回答した。

 過去最高レベルの好業績を背景に、賃上げは前年実績を上回るところも相次いだ。労働者の所得向上に向け、一定の前進があったと言える。

 ただ、ベアに勢いがあった14、15年の水準を下回ったり、小幅な上積みにとどまったりした企業が目立った。

 円安傾向、株高、好調な世界経済などから大手企業は最高益が見込まれ、賃金改善の条件は整っている中での春闘である。今年の環境を踏まえれば、賃上げの伸びは十分とはいえず、物足りなさが残る春闘だと評されている。

 政権が賃上げに関わる「官製春闘」は5年目。その安倍晋三首相が今年も求め、経団連も旗を振った賃上げ水準は3%だった。

 経営側は、3%の達成を強調するが、これは12カ月分の月収に一時金などを加えた年収ベースでの話だ。ベアと定期昇給による月収ベースで、同水準に達する企業は多くないとみられている。

 国内経済の最大の課題は、消費の押し上げである。賃上げで所得を増やし、消費を盛り上げる。政府は、それによって、物価を押し上げ、デフレ脱却を確かなものにする「経済の好循環」の実現を目指している。

 消費押し上げ効果が大きい月収ベースの伸びが十分でなければ、消費刺激効果は薄まる。今春闘の水準では、力不足であることは否めない。

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 大手は14日の集中回答で春闘が決着したが、大半を占める中小企業はこれからが本番だ。「好循環」を生み出すには、中小企業の賃上げ動向も鍵となる。沖縄でも、連合沖縄と県経営者協会が8日に会合を開き、連合が賃上げなどを要求して春闘が始まった。

 賃金は、自社の収益環境や設備投資、経済の急変など不測の事態への備えなども考慮し、決められる。

 賃上げは、退職金や社会保険料負担の増加につながり、雇用の維持コストが高くなる。経営が慎重にならざるを得ない面があるのも事実だ。

 ただ、コスト面を意識するあまり、賃上げによる優秀な人材確保、待遇改善を通じた業績拡大など投資の側面を過小評価してはならない。人手不足の中、賃上げできない企業から人材が流出し、淘汰(とうた)される恐れもある。時勢の特徴を見定めた賃金政策が求められている。

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 大手の春闘では、長時間労働の抑制や同一労働同一賃金へ向けた対応、女性や高齢者が働きやすい環境整備など「働き方改革」の議論も活発に行われた。

 非正規労働者の手当を拡充したり、介護や育児と両立しやすくする制度を設けたりする企業もあった。

 労働をどう捉え直して、働きやすい職場をつくり、生産性を向上させるか。企業を取り巻く環境が変わる中、こうした本質的な問題への対応が企業の継続性に死活的な意味を持ってくる。労使で取り組むべきテーマである。