当初から指摘されていたことが現実のものになった。

 国民全員に12桁の番号を割り当てるマイナンバー制度の通知カードが「受取人不在」などの理由で郵便局から市町村へ戻された数が県内で約11万1千通に上っていることがわかった。

 県内では約62万通が発送されており、市町村に戻った割合は今月19日までに約18%に上った。全国の約10%(13日現在)を上回っている。

 総務省は来年1月1日から運用開始する方針を変えていないが、その時点で通知カードを受け取っていない人が相当数に上りそうだ。見切り発車と言わざるを得ない。

 通知カードは世帯ごとに簡易書留で発送される。

 総務省も約5500万世帯のうち、5%に当たる275万世帯分が受取人不在で届かない可能性があるとの調査結果を9月に公表していた。住民票を移さず転居した人、医療機関や特別養護老人ホームなど施設に入居している高齢者や障がい者らである。

 今回、郵便局への搬入が遅れ、発送がずれ込んだことも要因の一つであるが、あらかじめ受取人不在で届かないことを想定した対策を練っておく必要があったはずである。

 そもそも内閣府が9月に公表した世論調査で、5割超が「内容を知らない」としているが、国民は、マイナンバー制度をどう評価しているのか。31・2%が「特に期待することはない」と答えている。

 3人に1人が期待することはないとする制度を政府が始めるのはなぜか。

 政府がメリットとデメリット両面の説明を尽くす姿勢に欠けていたというほかない。

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 マイナンバーは税、社会保障、災害関連の3分野から適用が始まり、政府は利用分野を広げていく考えだ。

 当初医療関係は差別にもつながりかねないと見送られていたが、2016年から特定健診(メタボ健診)の履歴管理、金融関係では16年1月から新規の証券口座の開設、18年からは銀行などの預金口座にも適用される。

 個人情報が「丸裸」にされる懸念が消えない。

 先の内閣府の世論調査でもマイナンバーに対する不安を問われ、「不正利用により、被害にあう」(38・0%)、「プライバシーが侵害される」(34・5%)、「監視、監督される」(14・4%)と答えていることからもわかる。

 実際、米国や韓国ではなりすましや個人番号の大量流出が報告されている。日本でも日本年金機構が5月にサイバー攻撃を受け、約125万件もの個人情報が漏えいした事件は記憶に新しい。

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 通知カードを受け取っていない人は児童手当や失業手当、生活保護の受給に際し番号を提示しなければならず、不利益を被る恐れがある。

 通知カードを受け取った人はむやみに番号を外部に漏らさないことが大切だ。

 企業も従業員らの番号を扱う。だが、システムの改修と研修が十分に行われておらず、情報流出の危険性を指摘する声がある。「スケジュールありき」で運用を開始するのは混乱をきたすだけである。