「劇場をつくりたいので、話を聞いてほしい」。取材で知り合った青年から、来社したいと電話があったのは2011年の1月だった

▼電話の主は役者で演出家の福永武史さん。いつでも気軽に使え、みんなと情報交換ができる拠点を探しているという。「仲間で不平を言っても始まらない。まずは自分が動く」

▼その思いを紙面で紹介するぐらいしか協力はできなかったが、数カ月後には場所を見つけたとの連絡が。どんな所かと見に行くと、仲間と内装工事の真っ最中。空き店舗だった室内にはペンキの匂いが漂っていた

▼こけら落とし公演直前でも客用のイスは足りないまま。こうして手弁当で誕生したのが県内演劇を活性化させるきっかけになった那覇市松尾の「わが街の小劇場」。今では毎週のようにさまざまな劇団の公演が行われている。情熱と表現者同士のつながりが、新たな文化潮流を生み出す好例だろう

▼福永さん演出のゴーリキー作「どん底」がきょうまで「わが街」で上演されている。「古典は手ごわい」と苦笑いしながらも、全力投球の1時間半の舞台

▼今年は富山県で開かれる演劇人コンクールに挑む。「書類審査もあり、出場できるか分かりませんが、踏み応えのある一歩」。劇場づくりに東奔西走した7年前と同じく「行動あるのみ」。その真っすぐな心意気がまぶしい。(玉城淳)