前進したとはいえ、沖縄の漁業者の立場からすればまだまだ不十分だ。

 日台漁業協定に基づき、2018年度の操業ルールを決める日台漁業委員会が台北市内で開かれた。

 焦点となっていた「八重山北方の三角水域」は、日本の操業ルールを適用する2カ所と、台湾の操業ルールを適用する1カ所の計三つに区分けすることで合意した。

 三角水域における操業ルールの変更は4年ぶりで、双方の適用水域を決めるのは初めてだ。

 三角水域はこれまで、日本と台湾がともに操業できる水域と、日本と台湾が昼夜交代で操業する水域に分けられていた。

 ところが、はえ縄船同士の距離を長く取って漁をする日本と、距離が短い台湾との漁法の違いからはえ縄が絡まったり、切断したりする事案が発生。台湾側が操業時間を守らないなどのルール違反も相次いだ。

 さらに台湾のはえ縄船が100トンを超える大型で船団を組むのに対し、沖縄のはえ縄船は小型が多く、トラブルを避けるため、操業を自粛せざるを得ない状況にあった。

 交渉は双方が操業ルールの適用水域の拡大を主張したため難航。最終日の16日深夜になってようやく決着した。

 同海域はクロマグロの好漁場である。新ルールは4月から7月までの「試行期間」と位置付けられている。

 三角水域での操業が新ルール通りに進み、同水域での操業秩序が維持されるのか、注視する必要がある。

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 日台漁業協定は2013年4月に締結されたが、操業ルールも定めないままの「見切り発車」というしかない協定だった。

 200カイリの排他的経済水域(EEZ)では日本だけが海の資源をとったり、調査したりする権利を持っているにもかかわらず、台湾漁船が操業できる内容である。

 背景にあったのは日中が尖閣諸島の領有権を巡り激しく対立した問題である。

 同じように領有権を主張する台湾と中国が連携することを警戒した日本が台湾に接近し、大幅に譲歩する形でEEZ内での操業を認めたのである。

 もともとはといえば、沖縄の漁業者が自由に操業できた水域だ。漁業者にしてみれば、生活の糧を得ていた好漁場を自国の政府による協定締結によって一方的に奪われたようなものである。しかも頭越しである。理不尽極まりないというほかない。

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 今回、操業ルールが見直されたとはいえ一部である。

 新ルール試行後、漁業者らが話し合う専門会議で現場海域での操業実態を検証し、次年度のルールを決める日台漁業委員会で再度協議が行われることになっている。

 沖縄の漁業者が不利益を被るような協定を締結したのは他ならぬ日本政府である。日本政府はそのことを忘れてはならない。

 政府は現行協定の見直しを一つ一つ積み重ねる努力を続け、沖縄の漁業者の声に真(しん)摯(し)に応えるべきである。