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  • 本紙がノミネートした22語から沖縄版流行語大賞2015が決定した
  • 1位は翁長知事の「うちなーんちゅ、うしぇーてぃないびらんどー」
  • 「県民をないがしろにするな」の意で、辺野古反対県民大会での言葉

 ことし1年を象徴する言葉として、沖縄タイムスがノミネートした22語の中から読者が選ぶ「沖縄版・流行語大賞2015」に、「うちなーんちゅ、うしぇーてぃないびらんどー」が決まった。「沖縄の人をないがしろにしてはいけませんよ」という意味のしまくとぅばで、発信したのは翁長雄志知事。5月にあった名護市辺野古への新基地建設に反対する県民大会で、沖縄の民意を踏みにじり建設を強行する政府や国民に向けて呼び掛けた。

沖縄版・流行語大賞2015

(写真下から反時計回りに)5月の県民大会であいさつする翁長雄志知事、慰霊の日に平和の礎で手を合わせる家族、百田発言を報じる沖縄2紙

沖縄版・流行語大賞2015 (写真下から反時計回りに)5月の県民大会であいさつする翁長雄志知事、慰霊の日に平和の礎で手を合わせる家族、百田発言を報じる沖縄2紙

 2位は節目に合わせ各地で追悼や継承のための催しがあった「戦後70年」。3位は「偏向報道」で、政権に批判的な沖縄の新聞などに圧力をかける動きが顕著だった状況を反映した。

 投票は25日から3日間、本紙ホームページやファクスで受け付け、計253人が参加。複数投票も可能とし、「うちなーんちゅ-」は投票総数の3割近い70票を集めた。

 菅義偉官房長官らが新基地建設推進の立場から繰り返した「粛々と」は4位で、翁長知事から「上から目線」と批判され使わなくなった経緯がある。6位に入った作家百田尚樹氏の「沖縄2紙はつぶさないといけない」発言は、タイムス、琉球新報の両編集局長が東京で異例の共同会見を開いて抗議するなど言論の自由の弾圧として注目された。

 経済分野は、北中城村に開業した県内最大規模となる商業施設「イオンモール沖縄ライカム」が強いインパクトを与え「ライカム」が5位。本島北部に計画されるユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)進出は15位だった。

 NHK連続テレビ小説「ちゅらさん」のおばぁ役で全国区の人気者となった平良とみさんの訃報のほか、名護市出身の父を持ち、小説「火花」で芥川賞を受賞したお笑いコンビ「ピース」又吉直樹さんも多くの関心を集めた。

■言葉への「共感」鍵 多くの人の心とらえた

 「一瞬にしてうまんちゅの心をとらえ、奮い立たせた魂の言葉」(50代男性)。3万5千人が集った新基地建設に反対する県民大会で、翁長雄志知事が発した「うちなーんちゅ、うしぇーてぃないびらんどー」には「沖縄版・流行語大賞」投票者の3割が共感した。

 知事は、沖縄だけに基地負担が集中し、もう嫌だと訴える県民の声が全く届かない理不尽さを「魂の飢餓感」とも表現。さまざまな手段を駆使して政府にあらがう「翁長知事」そのものを流行語に挙げる40代女性もいた。

 これに対し、新基地建設を進める政府が多用してきた「粛々と」には「体温がない」(30代男性)、「日常会話でもブラックジョークで使った」(30代女性)といった批判や皮肉が寄せられた。

 「偏向報道」「百田発言」に投じた理由では「2紙は本当のことを伝えていない」(40代男性)、「正論だから」(60代男性)、「左に偏りすぎ」(50代女性)といった県内2紙への反発が大半を占めたが、「(選挙結果など)世論を反映した報道をするのは当然」「百田発言は県民として許せない」(70代男性)など2紙を評価する立場もあった。

 9月に成立した安全保障関連法をめぐっては、多くの若者たちも異議を唱え社会現象に。「シールズ琉球」に投票した60代男性は「若者のこうした動きに希望の灯(あか)りを見ることができる」と期待した。

 日本の戦争参加に道を開く安保法整備を念頭に、別の60代男性は「『戦前』と痛感した1年だった」と戦後70年の節目を振り返った。

 「子どもの貧困」も、関心の高さをうかがわせた。いずれも40代女性から「子を持つ親として胸が苦しくなり、何かできることはないか考えた」「やっと新聞の1面で取り上げてくれるようになった。日本のいろいろな制度を見直す時が来ている」との声が上がった。

 このほか、「ピース」又吉直樹さんの芥川賞受賞と、松島良生(らい)君や翁長希羽(のあ)ちゃんの心臓移植手術実現に向けた県民挙げての募金活動について、30代女性は「基地や戦争の話が中心で気持ちが沈むこともあったが、沖縄の底力をみせるような明るい話題だった」と書き込んだ。

<感情超えた議論を>西向幸三さん エフエム沖縄アナウンサー

 上位3つの言葉は「閉塞(へいそく)感」でつながると考えている。翁長雄志知事の発言「うちなーんちゅ、うしぇーてぃないびらんどー」は、基地問題など「戦後70年」を経ても変わらない沖縄の現状から自然に出た言葉だろう。

 一方、「偏向報道」といいう言葉は今年、私自身もラジオの仕事をする中でこれまで以上に見聞きした。メールで批判が届くこともあった。基地問題で反対と賛成の声が感情的になり、自分の意見が言いづらい社会になっていると感じる。お互いに一歩引いて意見交換、議論できる場が必要だと思う。

 ちなみに、私が今年の言葉を挙げるなら「子どもの貧困」だ。私自身の貧しかった幼少期、親世代の今の目を通し、子どもたちが犠牲になる社会を変えなければと強く思う。

 弱者を取り巻く社会状況も含め、あらためて「平和」という言葉が未来のキーワードになるのではないか。若い世代が真剣に平和を考えることが大事だ。

<沖縄の厳しさ反映>山田健太さん 専修大教授(言論法)

 現在の沖縄の「闘っている」状況を表す結果だ。その相手は大きく、無関心・思考停止、神話(誤解)、沖縄差別、国益(安全保障)の4つあると考えるが、それらに対する県民の気持ちを表現した言葉を、節目ごとに知事が本土・日本政府に対して発してきた。7位の「魂の飢餓感」のほか「政治の堕落」などほかにもあろうが、それらの象徴として得票を集めたのが1位の言葉だと思う。

 いわゆる報道圧力問題を表す「偏向報道」がランクインしたことも興味深い。投票者は、政府の基地政策に批判的な沖縄の地元紙を「偏向」と捉えている層を代表しているのかもしれない。一方で、選挙結果や世論調査などで辺野古新基地建設に反対する県民の民意は明白に表れており、読者の意思に寄り添う地元紙が、公権力の報道批判の矢面に立つ状況に危機感を抱き投票した人もいるのではないか。いずれにせよ言論の自由をめぐる言葉がこれほど注目されるのは沖縄の特徴といえ、沖縄が置かれた厳しい現状を反映している。