「千円ちょうだい。お父さんがお金なくて、かわいそうなんだ」。本島中部に住む小学校低学年のタカトは大人に金銭をねだる癖がある。断られると「何だよ、けち」と悪態をつく。

子どもの居場所の施設で食事するタカト=本島中部

 病気がちで働けない父親とアパートで生活保護を受けて暮らす。地域との関わりはほとんどなく、親子2人で過ごすことが多い。母親が夜働いて生計を支えていたが、4歳のとき両親が別居し、父に引き取られた。母や父親違いの兄とは長く会っていないが、「別に寂しくない」と強がってみせる。

 運動会は弁当を作ってもらえず、午前中で早退した。保育園時代も弁当の日は登園しなかった。学校は休みがちで、徐々に学習についていけなくなっている。

 子どもの居場所になっている施設に時々、一人で現れる。初めて来た日、空腹のはずなのに、出された食事を半分残した。「お父さんに持って帰ってもいい?」。スタッフが「全部食べて。お父さんのは別に用意するから」と声を掛けると、うれしそうに完食した。幼い心の中に、自身の境遇へのいら立ちと家族への愛情が同居している。

▽夢描けぬ中2の夜

 イルミネーションが華やかに街を彩る北谷町美浜。午後11時を回ろうというのに中学2年のユウカは家に帰ろうとする気配がない。「帰っても誰もいない。友達と遊んでいたほうが楽しいから」

 ユウカが小学3年の時に両親が離婚した。公営団地に母娘2人住まい。母親はユウカの学校が終わる午後5時ごろ、居酒屋の仕事に出て朝方まで戻らない。

 ユウカが学校に行く時間には寝ているので、会話はあまりない。たまに話をするときも、母親は何かにいら立っている。

 「いつも疲れている。話すと私もいらいらする。私のために働いてくれているのは分かるけど…」

 中学生になったころから、朝食が準備されていることはめったになくなった。給食時間になるころには、気分が悪くなるくらいおなかが空いている。

 たまに渡される1週間分の食費は千円のときもあれば2千円のときもある。コンビニでパンやおにぎりを買っておなかを満たす。一度だけ、手持ちのお金がなくなり、18歳以上だと偽ってスナックでアルバイトをしたことがある。

 今のところ、高校に進学するつもりはない。「お金ないし、勉強は嫌い。何したら稼げるかな」。学校に通ってまでやりたいことはないという。とりあえず、自分にもできる仕事を探すのだと言った。

▽奨学金返済780万円

 返済予定額780万円。大学3年の奨学金説明会で、手渡された明細書を前に、県内の大学に通うユウスケ(23)は頭を抱えた。

 高校生のころ両親が離婚し、パートで働く母親と2人暮らし。教師になる夢があったが、家計は苦しく、大学は無理だと諦めかけた。恩師から奨学金制度があることを教えられ、進学の道を選んだ。

 入学と同時に、有利子の奨学金を借りた。最大額の月12万円。学費と生活費に充て、それでも足りないので、アルバイトを続けた。

 卒業までの借入額は500万円。これに280万円の利子が付く。

 返済のため、教師の夢は諦め、県内企業への就職を決めた。入社半年後から毎月3万3千円の支払いが20年間続くことになる。「終わらないマラソンを走るような気分。人並みに結婚して家族をつくれるのかな」。暗い表情でつぶやいた。(文中仮名)(「子どもの貧困」取材班・田嶋正雄、松田麗香、比嘉太一)

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 国内の6人に1人は貧困の子どもたち。働く貧困層が多い県内は、さらに割合が高いと見込まれ、「子どもの貧困」はより身近な問題だ。家庭の事情などで経済的に困窮し、孤立し、夢や可能性を奪われている子どもたちがいる。子どもの実態や背景にある家庭や社会の問題を追い、必要な支援を考える。

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