沖縄本島南部の子どもの居場所となっている施設。風が冷たい12月のある日、金魚の水槽を洗っていた小学校低学年の兄弟、エイタとケントにホースの水が掛かった。

子どもの居場所の施設で入浴するエイタとケントら=沖縄本島南部

 「えー、やばいってば」「めっちゃ冷たーい」。着ていた服がびしょぬれになった。

 「このままじゃ風邪ひいちゃうな。シャワー浴びようか」。施設を運営する男性が声を掛けた。「いいの?」「やったー」「水遊びしようぜ」。はしゃぎ声が風呂場に響く。「ちゃんとせっけん付けて洗おうな」。施設の男性は一人ずつ体を丁寧に洗った。

 男性がホースの水を掛けたのは、何日も風呂に入っていない兄弟のために仕掛けた「芝居」だった。弟のケントはその日、遊びながら「おれ、くさい?」と体のにおいを何度も気にしていた。

 自分たちだけ入浴を促されれば、二人は抵抗感を示す。子どもの自尊心を傷付けないよう気を使い、友達も巻き込んで自然に汚れやあかを落とせるよう誘導した。「うち、ガスが止まってお湯が出ないんだ」。シャワーを浴びながら兄のエイタがつぶやいた。

    ■    ■

 風呂上がり、シャンプーの香りを漂わせた二人は、施設にある中古の衣類から着替えを選んだ。自分のサイズに合う服を着て帰っていいと伝えられ、喜んだ。

 兄弟は20代の母親とアパートで暮らす。シングルマザーの母親は無職で生活保護を受けている。この母親も同じようなひとり親家庭で育った。世代を超えた「貧困の連鎖」が続く。

 母親が朝起きられない日、兄弟は朝食抜きで登校する。歯磨きや着替えの習慣がなく、何日も同じ服を着ていることが多い。

    ■    ■

 エイタは掛け算九九が苦手で、ケントはカタカナがおぼつかない。二人とも「勉強は全然おもしろくない」と口をそろえる。低学年のうちから学習についていけなくなっている。

 施設の男性は「問題家庭とみられがちだが、親を悪者にしても子どもの困難は解決しない」と強調する。

 兄弟を数カ月前から放課後、無償で預かり、居場所を保障している。ほかの子と遊んだり、宿題をしたりして過ごす中で、エイタは「嫌なことが多かったけど、最近毎日楽しい」と言うようになった。

 男性は「この子たちを放置すれば、成長とともに社会から孤立していく可能性が高い。人生を諦めてしまう前に社会の支援が必要だ」と話す。(「子どもの貧困」取材班・田嶋正雄)(文中仮名)