北朝鮮は6日、初の「水爆実験」を実施したと発表した。前触れのない突然の実験だ。原爆の数百倍のエネルギーを放出する水爆実験成功が事実なら、核の脅威が一段と増すことになる。

 国連安保理決議に反するばかりか、朝鮮半島の緊張を高め、東アジアの安全を脅かす核実験強行に強く抗議する。

 「なぜこのタイミングなのか」「なぜ事前の予告がなかったのか」。核のカードを切って米国を交渉の場に引き込むというような外交的意図が伝わってこない。

 外交に関心が薄いといわれる金正恩(キム・ジョンウン)第1書記だが、内政で目立つのは軍の実力者や高官の処刑、解任といった粛清だ。実験は、その強圧的な統治に対する不満をそらし、権威を誇示するための体制固めという見方もある。5月に36年ぶりとなる朝鮮労働党大会の開催を控え、国威発揚の狙いも指摘される。

 対外的には、関係改善の見通しが立たない米国の関心を引きつけ交渉を再開し、「敵視政策」を転換させたいとの思惑があるのだろう。

 北朝鮮と距離を置く中国の習近平指導部に対する不満も一因とされる。公演のために北京を訪れた北朝鮮の女性音楽グループ「牡丹峰楽団」が突然帰国するという“事件”があったばかりだ。

 閉鎖国家のやることは推測はできても、事実に基づく分析が難しい。 

 ただはっきりしているのは、今回の実験によって北朝鮮が国際社会からますます孤立することである。

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 北朝鮮は1985年に核兵器を製造しないことなどを約束する核拡散防止条約(NPT)に加入。その後、米国と核問題解消の枠組み合意に署名するが、ウラン濃縮計画が発覚し、2003年NPT脱退を表明した。

 06年、09年、13年と核実験を強行、そのたびに安保理は制裁決議を採択している。

 国際社会が北朝鮮を核保有国として認めるようなことになれば、平和のために世界の多くの国が加わるNPT体制は完全に崩壊してしまう。しかし一方、北朝鮮が核を保有しているのも事実で、NPT体制の形骸化が進みかねない深刻な事態だ。

 それにしても米国の北朝鮮非核化政策が失敗の連続で、成果を挙げることができなかったのはなぜか。北朝鮮の核放棄を確認した6カ国協議も08年から途絶え、有効な対策がとられなかった。

 米、中、韓、露、日の関係国が共同歩調体制を立て直す必要がある。

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 北朝鮮の水爆実験が拉致被害者の帰国に向けた日朝交渉に影響を与えるのは確実である。

 14年に北朝鮮との間で合意した拉致被害者の再調査は、1年とされた期限が過ぎても報告がないままだ。

 被害者の家族は「日朝合意の内容を実行し、家族を帰国させてほしい」と切望するが、国際社会の制裁強化は避けられず、再調査が長引く可能性がある。

 そもそも北朝鮮に日朝合意を誠実に履行する気があるのかさえ疑わしい。