通常国会は衆参両院で代表質問が行われ、論戦の火ぶたが切られた。昨年秋に臨時国会が開かれなかったため、約3カ月ぶりの攻防となった。

 憲法違反が指摘されている安全保障関連法、農家の不安が根強い環太平洋連携協定(TPP)、消費税再増税に伴う軽減税率の財源など、議論すべき問題が山積している。ただ、2日間の代表質問は、激しい言葉の応酬はあったものの、互いの主張をぶつけ合うにとどまった感が強い。

 民主党の岡田克也代表は、軽減税率制度導入に必要な約1兆円の財源について「不明確だ」とただした。これに対し、安倍晋三首相は「安定的な恒久財源を確保する」と強調したものの具体策は示さなかった。深刻な財政難の中でどう捻出するのか、国民の多くが感じる疑問は残された。

 2015年度補正予算案に盛り込まれた低所得の年金受給者に対する3万円の臨時給付金についても、野党側が「税金を使ったばらまきの選挙対策」などと批判した。首相は「アベノミクスの果実を活用して給付する」「1回限りの措置でばらまき批判には当たらない」などと反論したが、子育て世代や非正規雇用の若者らの中にも困窮者は多い。なぜこうした人たちには行き渡らないのか不明確だ。

 安保関連法については「世界の多くの国々から強い支持と高い評価が寄せられている」と主張したものの、多くの憲法学者が指摘する違憲性の疑いは払拭(ふっしょく)されていない。

 いずれの問題も、説明責任を果たしたとは言えない。印象に残っているのは首相の強気の姿勢だ。

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 米軍普天間飛行場の返還に伴う名護市辺野古の新基地建設についても、首相の答弁は納得できるものではない。

 共産党の穀田恵二氏の質問に、辺野古移設が「米軍の抑止力を維持しながら、同時に普天間の危険性の一刻も早い除去を図るための唯一の解決策」だと、工事を推進する考えをあらためて示した。

 翁長雄志知事が「あらゆる手段で新基地建設を阻止する」と再三訴え、政府との対立が法廷闘争に持ち込まれていることなど全く意に介していない。

 沖縄の歴史や過重な基地負担に対する認識を問われ、「政府として沖縄の歴史を十分に心に刻み、沖縄の方々の気持ちに寄り添いながら、沖縄の基地負担軽減や沖縄の振興に全力を尽くす」と述べた。辺野古以外の選択肢を探ることなく、なりふり構わず工事を強行しつつ、「沖縄に寄り添う」と言われてもしらじらしく思えてしまう。

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 安倍首相は年頭の記者会見で通常国会を「未来へ挑戦する国会だ」と位置付けた。

 夏には18、19歳の若者が初めて投票権を得る参院選が控えており、若者の政治参加への意識の高まりが注目されている。

 であればなおのこと、有権者が的確に判断できるよう、今後の委員会審議などで議論を深める責務がある。政府・与党には国民に負担増を強いるような議論も先送りしない姿勢を、野党にはしっかりとした対案を示すよう求めたい。