「県障害のある人もない人も共に暮らしやすい社会づくり条例」(共生社会条例)に基づく、初年度の相談結果がまとまった。

 条例が施行された2014年4月からの1年間に、県や市町村に寄せられた相談は合計122件。そのうち条例で禁止する差別に関する相談は3件と少なく、残りはつらいことや嫌なことを訴える相談、意見や要望だった。第三者が助言やあっせんを行う「差別等解消調整委員会」は一度も開かれていない。

 全ての県民が安心して暮らすことのできる共生社会に向けて動きだした条例をどう使いこなしていくのか、次の課題が浮かぶ。

 共生社会条例の特徴は、福祉サービスや医療、雇用、教育などの10分野で障がいを理由とする差別の禁止を具体的に規定し、必要かつ合理的な配慮を提供する義務をうたったことである。

 そのために県に広域相談専門員を配置し、市町村の差別事例相談員と連携した体制を整えた。相談員による解決が困難な場合、調整委員会にかけられる。

 条例に該当する3件の中に、「障がい者福祉施設の利用時に食事の提供について条件を付けられた」との相談があり、相談員を交えた三者で話し合った結果、事業所から改善策が示された。障がい者と事業所双方から話を聞き、当事者間の調整に行政が関わる仕組みができたことは評価できる。

 それにしても3件は少なすぎる。せっかくできた条例が、なぜ活用されていないのだろうか。

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 「意に反して施設での生活を強制された」「保育園への入園を拒否された」「乗車拒否や入店拒否にあった」。条例制定の背景には、さまざまな困難に直面する障がい者の声があった。 

 この状況が劇的に改善されたわけではないのに予想以上に相談が少なかったのは、相手のあることなので言い出しにくい、訴えたことで逆にひどい目に遭うのではないかなどと悩み、躊躇(ちゅうちょ)したからだろう。

 寄せられた相談で、相談者自身が調整を断ったケースもあるという。

 確かに「差別を受けている」と声を上げるのは勇気がいる。しかし、それでも差別に関する相談を一つ一つ重ね、解決のプロセスを通じて、障がいへの理解を深めていくことが、条例の目的達成につながる。

 県や市町村には、相談しやすい環境づくりを求めたい。

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 具体的な差別は認められなくても、日常生活の不満や生きづらさといった相談が多数寄せられた意味も考えなければならない。生きづらさの背後に、障がい者に対する誤解、偏見、理解不足が横たわる。

 誰にとっても暮らしやすい社会をつくるためには、県民の理解とサポートが欠かせない。

 障がいのある当事者たちの主体的な取り組みによってできた画期的な条例だ。

 今度は条例を大きく育てる運動を展開してほしい。