私らしく、はたらく(11)吉戸三貴

 「昔は極度の人見知りで…」と自己紹介すると驚かれるのですが、実家にあった大きなつぼに隠れていた幼少期から20代後半まで、私はずっと人と関わるのが苦手でした。それが今ではPRとコミュニケーションの仕事をしているのですから人生は分からないものです。

 転機になったのは、パリ留学中の出来事でした。授業でほとんど発言しない私に、しびれを切らした先生がこう言ったのです。「ミキ、思っていることがあるなら口を開きなさい。何も言わないのは存在しないのと同じよ」。はるばる沖縄からやってきた花の都でまさかの透明人間扱い! ショックでしたが、はっきり言われたことで、伝える努力を怠ってきた自分に気付かされました。人見知りだからと言い訳して、コミュニケーションを相手任せにしていたことを反省したのです。

 このままじゃいけない。思っていることを言葉や行動で表せるようになって、もっといろいろな人と交流したい。そう考えた私は、「ひとみしり」の文字にかけた五つのルールをつくって実行することにしました。

 「ひ」人を好きになる。相手の良いところを見つけて、まずは褒めることから始めました。気の利いたことは言えなくても、これならできると思ったからです。

 「と」とりあえずあいさつとお礼。恥ずかしさから小声で曖昧にしがちだったのを改めて、明るくハッキリとした声で伝えるようにしました。

 「み」皆に好かれなくてもいい。どんな人気者でも万人から愛されるのは難しいのだから、私の場合、関わる人の半数から嫌われなければラッキーだと考えるようにしました。

 「し」自分にできることをする。上司のために会議資料を分かりやすくまとめたり、友人に会う時にささやかな手土産を用意したり、公私を問わず、相手のための一手間を惜しまないようにしました。

 「り」リラックス。張り切りすぎて疲れないよう、ひとりで静かに過ごす時間も確保しました。努力し続けるための工夫です。

 時間はかかりましたが、少しずつ周囲の人たちとの間にあった緊張や摩擦が減っていき、私は人見知りを卒業しました。コミュニケーションの課題を克服した経験は今の仕事にも生かされています。いつかパリ時代の先生に伝えられたらいいなと思っています。「先生、私、透明人間じゃなくなったよ!」(コミュニケーションスタイリスト)