1052人-。沖縄県警が2017年に届け出を受け付けた行方不明者の数だ。ある日突然、いなくなった肉親を捜す一家族を追った。(社会部・篠原知恵)

行方不明になる10日前、琉球大学の卒業式で記念写真に収まる謝名裕多さん(家族提供)

◆「ちょっと出掛ける」から1年…

 琉球大学の卒業式を終えたばかりの謝名裕多さん(23)が、糸満市の自宅からこつぜんと姿を消して4月で1年になる。糸満高校バドミントン部で、県大会上位に入る腕前。面倒見がよく、大学進学で1人暮らしの頃は両親に3日に1度の連絡も欠かさなかった。「命さえあればいい」。足取りを追い、帰りを待つ家族らは情報を呼び掛ける。

 「ちょっと友達と出掛ける」。昨年4月4日午後5時すぎ。裕多さんは、父徳次さん(61)に電話口でこう言い残したのを最後に消息が途絶えた。外出前に連絡するのは謝名家のルール。当時、仕事中で慌ただしく電話を切った徳次さんは「震えたような声だった」と振り返る。

 この10日前、裕多さんは母まさみさん(65)と琉大の卒業式に出席。笑わせるのが大好きで同じ工学部の卒業生十数人の中心で白い歯をのぞかせ、集合写真にも納まった。6月の就職試験に向けた対策本を買いそろえ、アパートを出て、実家で受験勉強に本腰を入れると意気込んでいた。

 翌日夕にも自宅に戻らないのを心配し、まさみさんが裕多さんの携帯電話に何度か電話を入れたが電源切れのアナウンスが流れるだけ。5日待っても連絡が取れず「いくらなんでも変だ」と警察に相談した。

 行方不明届を出した糸満署には「成人男性だし、自ら家を出たのでは」とも言われた。だが通帳も、ためた数万円も自宅に残したまま。視力が悪いのに、眼鏡や未使用の使い捨てコンタクトもあった。数千円入りの財布だけを手に自宅を出たとみられる。自らの意思で長く家を空けたわけではない、と家族は思う。

 いなくなる前夜、漫画の話で一緒に笑い転げた姉沙也加さん(28)は「昔から弟は悩みがあれば食欲が減る。でもこの日の夕飯は全部平らげていた」と思い返し「自殺は考えられない」と話す。姿を消す1時間前まで裕多さんとオンラインゲームを楽しんでいた大学の同級生も「全く心当たりがない」という。

 裕多さんの左肘には、幼少期に缶詰で切った傷痕がある。沙也加さんは「事件に巻き込まれた可能性がある」と情報提供を呼び掛けている。連絡は、電話090(9789)0468。