米軍基地建設は、地元の合意なしに強行してはならない。それが議論の前提である。

 安倍晋三首相は12日の衆院予算委員会で、名護市辺野古で強行している新基地建設をめぐり米軍普天間飛行場を抱える宜野湾市の市長選(17日告示、24日投開票)などについて「安全保障に関わることは国全体で決めることだ。一地域の選挙で決定するものではない」と答弁した。

 県内では6月に県議選、7月に参院選が予定されており、選挙結果のいかんにかかわらず、新基地建設を押し進める考えを示したものだ。

 安全保障政策は国の専管事項で、沖縄が選挙を通じてどんな民意を出したとしても新基地をつくる、と言っているのに等しい。

 仮に安全保障政策が国の専管事項であったとしても地域の意思を無視して米軍基地の建設が許されるわけではない。自治体は住民の生命と財産、生活を守る任務がある。地元の理解を欠いた安全保障政策は「砂上の楼閣」である。首相発言は民主主義、地方自治にもとる考えだ。

 だが、安倍政権が強権的な手法で辺野古新基地建設を強行していることを考えれば、「さもありなん」である。

 県内で行われた2014年の選挙は新基地に反対する候補がすべて勝利を収めた。名護市長選、衆院選の全4小選挙区、知事選である。翁長雄志知事が埋め立て承認した前知事に約10万票の大差をつけて民意がはっきり示されたにもかかわらず、建設を強行しているのが安倍政権である。

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 日米安保条約を肯定する人は8割を超える。にもかかわらず米軍専用施設が沖縄に集中するのは不条理この上なく、沖縄が求めているのは受益に見合う応分の負担だ。

 沖縄タイムスが46都道府県知事を対象に実施したアンケートで、国と県の対立について多くの知事が「防衛は国の専管事項」などとコメントを避けた。国の専管事項との言葉を前に思考停止しているのではないか。結果的に安倍政権による沖縄への押しつけを追認していることになっており、残念で仕方がない。

 その中にあって秋田、滋賀両県の知事が普天間の受け入れ協議を国に打診された場合「内容を伺う」などと回答しており、2県とはいえ心強い。全国知事会に沖縄の基地負担を協議する場を設置することが決まっており、沖縄からの発信力も高めたい。

 高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場は国が選定する方針だ。国との対立はどこでも起きる可能性があり、沖縄の問題は人ごとでないのを忘れてはならない。

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 今年夏の参院選から、「18歳以上」に引き下げられた選挙権を高校3年生らが初めて行使する。歴史的な選挙となるこのタイミングで、新しく有権者の仲間入りをする若者は安倍首相の発言をどう受け止めるだろうか。

 選挙前に予防線を張り、新基地建設に反対する大多数の県民に「無力感」を与える狙いが感じられる。

 「地元の頭越しに進めない」という橋本龍太郎元首相の姿勢を思い起こすべきだ。