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  • 東日本大震災の被災者のために無償で似顔絵を描く人がいる
  • 那覇から東北に通い続け5年で6073人分の似顔絵を描いた
  • 「もう並んで写真が撮れない人も、絵の中なら一緒にいれる」

 東日本大震災で家族や大切な人を失い、津波で家が流され写真も無くなった人たちに、無償で似顔絵を描き続けているイラストレーター、那覇市の森琢磨さん(42)。月に1度のペースで東北を訪ね歩き、描いた似顔絵は6073人分(12日現在)に上る。活動は5年を迎え「もう一緒に並んで写真が撮れない人も、絵の中でなら一緒に描くことできる。僕にできることを続けていく」と思いを語る。(社会部・吉川毅)

森琢磨さん(左)が描いた似顔絵を受け取る丹野裕子さん=2014年9月、宮城県名取市

 震災直後、被災した友人を勇気づけたいと、家族写真を似顔絵にして送った。それを機に「自分にもできるボランティアがある」と決意。沖縄県内外のイベントに参加しては1人千円で似顔絵を描き、集めた資金で東北に通い続けている。

 B6サイズの画用紙に描く時間は1人5分~10分。携帯電話の待ち受け画面に残った娘の写真が唯一の形見という女性は、完成した絵を見て泣き崩れ、津波でアルバムが流された高齢の女性は「自分の遺影にしたい」と喜んだという。

 息子の公太君(当時14歳)を津波で亡くした宮城県の丹野裕子さんとは、家族がそろった絵を描いたのを機に今も連絡を取り合っている。先日、来年のリクエストがあった。「今度は、20歳になった息子の似顔絵を描いて欲しい」

 そんな森さんの活動はフェイスブックなどで広がり、似顔絵の依頼が途切れることはない。森さんは「それぞれの思いに耳を傾けながら描くことで、被災地の人々の多くの笑顔にも出会った」と頬を緩める。

 「最初は支援が目的だったが、今はボランティアという立場を超え、家族や友だちと会う気持ちで通っている。人とのつながりの大切さを実感している」