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  • 琉球の宮廷音楽に使われた楽器「ガクー」の奏者が今帰仁村にいる
  • 300年前から世襲され6代目。沖縄戦では地中に埋めて戦火を逃れた
  • 豊年祭に欠かせない「與儀家の誇り」は、7代目に受け継がれている

 琉球王国の宮廷音楽「路次楽」に使用する吹奏楽器の一つ「ガクー」の奏者が今帰仁村湧川区にいる。約300年前から世襲され、與儀弘文さん(75)は6代目。当時から使われた漆塗りの「ガクー」は修復を重ねながら、今も継承されている。区の豊年祭にも欠かせない存在で、與儀さんは「琉球古来の民俗芸能文化を大切にしたい」と話す。

およそ300年前に初代の銀太郎が製作した「ガクー」を演奏する6代目の與儀弘文さん=今帰仁村湧川の與儀さん宅

首里金城町の石畳で演奏する湧川の路次楽。後列左が5代目の富三さん

およそ300年前に初代の銀太郎が製作した「ガクー」を演奏する6代目の與儀弘文さん=今帰仁村湧川の與儀さん宅 首里金城町の石畳で演奏する湧川の路次楽。後列左が5代目の富三さん

 「ガクー」は主に三つのパーツで構成。ラッパの形の部分は直径約12センチ、ガジュマルで作られている。笛子と呼ばれる音階部分の素材はリュウキュウハリギリ。長さは約30センチ、表に七つ、裏に一つの穴がある。音を出すリード部分にはわらを差し込む。

 與儀さんは「これは初代の與儀銀太郎が制作したガクー。約300年代々受け継がれている。沖縄戦では穴を掘って埋めたので助かった」と演奏して見せた。

 ガクー演奏は豊年祭のスーマキ棒が演武する時の「サーサーガク」「太鼓ガク」「アギガク」の3曲あり、上句と下句の間に棒方が「クラサーサー」と囃はや子しを入れる。どの句もひと呼吸で1分近く演奏しなければならないという。

 陸上競技やダイビングもしている與儀さんは奏者であり、制作者。「肺活量が必要な楽器。5代目まではほとんど65歳前後で引退した。私は15本のガクーを制作した」と振り返る。

 伝承に教科書はなく、聴いて覚える。1969年に5代目で父の富三さんが東京国立劇場で「沖縄民俗芸能発表会」に出演後、無言で初代が制作したガクーを手渡した。與儀さんは26歳。6代目のバトンを受け取った瞬間だった。

 あれから半世紀。與儀さんは「7代目はすでに区の豊年祭で演奏を披露した。與儀家一門の誇りだが、門外では地元から離れない区民5人に伝授している」と話す。

 約20年前、同区で「路次楽保存会」を組織し、会長も務める與儀さん。仏壇には82歳で他界した富三さんと先祖の遺影の前に、それぞれ1本のガクーを供え、伝統の継承を誓っている。(玉城学通信員)