自民党の桜田義孝元文部科学副大臣が14日、党本部で開かれた会議で「従軍慰安婦」について、「職業としての売春婦だった。それを犠牲者だったかのようにしている宣伝工作に惑わされすぎだ」と発言した。

 慰安婦問題で日韓両政府が「最終的かつ不可逆的な解決」で合意して3週間もたたないというのに、合意を覆すような暴言だ。元慰安婦を傷つける発言は、撤回したからといって見過ごすわけにはいかない。

 桜田氏は売春防止法が戦後に施行されるまで売春は仕事だったとした上で「売春婦だったということを遠慮して(言わないから)、間違ったことが日本や韓国でも広まっているのではないか」と語った。

 桜田氏は文部科学副大臣を務めていた2014年、河野談話見直しに賛同する考えを示し、韓国政府から厳しく非難された過去を持つ。

 旧日本軍の関与と強制性を認めた河野談話は歴代内閣が継承するものだ。安倍晋三首相は戦後70年談話で「深く名誉と尊厳を傷つけられた女性たちがいたことも忘れてはならない」との言葉で慰安婦に触れた。昨年末の日韓合意は、日本が軍の関与と政府責任を認め、「おわびと反省」を表明する内容だった。

 桜田氏の発言は、この日本政府の見解や合意のすべてに反している。

 歴史的とされた日韓合意で日本側が重要視したのは「最終的かつ不可逆的な解決」である。これで終わりにしたいと強調したわけだが、蒸し返しているのはどっちなのか。

 国会議員失格だ。

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 慰安婦問題を否定する人たちはよく「当時は公娼制度があった。女性たちは高収入を得て、ぜいたくな暮らしをしていた」と口にする。桜田氏の主張もこれに似ている。

 しかし慰安婦にさせられた外国の女性の多くは公娼制度とは何の関係もない。河野談話にあるように「募集、移送、管理等も、甘言、強圧による等、総じて本人たちの意思に反して行われた」のだ。

 慰安婦問題に詳しい大沼保昭・明治大学法学部特任教授は自著「『歴史認識』とは何か」(中公新書)で、「強制はなかったとか慰安婦が公娼だったと言い募ることは、ほぼ実証されている学問的成果を真っ向から否定することになる」と指摘する。

 慰安所が軍の施設として設置されたことを示す公文書も見つかっており、韓国の元慰安婦が植民地支配の犠牲者だったことは疑いようがない。

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 韓国では元慰安婦支援団体などが合意は無効として反発を強めている。この時期に安倍政権の足元から事実をねじ曲げる発言があったのでは、韓国側の理解も遠のく。

 日韓合意は、その実、非常に壊れやすい、ぎりぎりの中身だ。「不可逆的な解決」を揺るがす政治家には厳しい対応で臨まなければ、合意は空洞化する。重視すべきは当事者の気持ちだ。

 安倍首相本人か名代が出向いて元慰安婦の女性たちに直接謝罪するなど、政府として誠意を示していく必要がある。