全国紙から記者交流で来た同僚が必ず驚くのが「読者との距離の近さ」だ。電話に出て、その日の高校野球の結果を聞かれ面食らう。伊波普猷の「猷」の字の書き方を尋ねられ立ち往生する

▼記事に直結する情報提供は日常茶飯事。初めて会う人に記事を褒められ、逆に指摘を受けることも多い。こうしたつながりが当たり前でないことを、外部の目に教えられる

▼少し前、毎日激励の電話をくれる読者もいた。各部署にかけるので、人が少ない日曜の朝などは編集局を走り回って受話器を取り、同じ話を聞くことに

▼締め切りがあって短めに切らせてもらう日もあった。でも「頑張りましょう」という言葉が、いつもぬくもりを残してくれた

▼新聞はなぜ戦争を止められなかったのか。当時を知るジャーナリスト、むのたけじさん(101)が昨年、本紙に語った。「読者と新聞が組めば軍部も動けなかった。だが、新聞が読者に目を向けず信じ切ることもできなかった」「読者を頼りにしない新聞は孤立する」

▼自民党若手議員の勉強会での「報道圧力」発言。その対応で、沖縄2紙に新聞労連ジャーナリズム大賞特別賞が与えられた。私たちが動じなかったのは、まさに読者を頼れたからだと思う。誰のために、何のために書くのか。顔の見える関係が、その指標をはっきり示してくれる。(阿部岳)