【南風原】沖縄戦で手話を使った町民がスパイ視された歴史を前文に盛り込んだ南風原町の手話条例案が27日、同町議会(宮城清政議長)の最終本会議で全会一致で可決された。被害の歴史を明記し、共生社会をつくる狙い。「スパイ視」を盛り込んだ手話条例は県内初とみられる。県聴覚障害者協会は「条例制定を機に手話の使いやすい環境が整ってほしい」と期待している。

南風原町手話条例案の議会可決を喜ぶ県聴覚障害者協会の野原龍信会長(前列右から4人目)ら=27日、同町役場

 「町手話及び障がいの特性に応じた多様なコミュニケーション手段の利用促進に関する条例」は、町内在住で同会の野原龍信会長(55)が、沖縄戦での歴史を盛り込むよう町へ訴えた。

 野原会長は1993年ごろ、町内の聴覚障がい者の男性から戦争体験を聞き取りした。体格が大きく徴兵されてもおかしくない男性が手話を使ったため、日本兵から2度、スパイと疑われた。刀に手をかけた兵士もおり、父親が説明し事なきを得た。男性は疑われたことへ激しく怒ると共に恐怖も感じたという。

 条例前文には「沖縄戦で手話を使ったろう者がスパイと疑われ、障がいのある人達の人権が奪われてきた歴史もある」と記載。その歴史を踏まえ、手話や点字など特性に応じたコミュニケーション手段の利用を促し、障がいの有無にかかわらず心豊かな地域社会を目指すとした。

 野原会長は「手話という言語があると知ってほしい。福祉の枠内にとどまらず、一般社会に広がってほしい」と話す。この日の本会議は、聴覚障がい者ら15人ほどが傍聴。可決されると、両手をぱーの状態でひらひらさせる手話の「拍手」で喜びを表した。

 施行は4月1日。同町は、学校現場などで手話の存在を丁寧に伝えることなどを検討する方針。手話に関する条例は県と浦添市が制定している。